2009年8月29日(土)
光原百合さん
ギリシア神話を舞台に若い二人の愛と冒険の物語
 「イオニアの風」を出版
   構想から20年、書き下ろし長編
表紙
 癒しのミステリー「十八の夏」で日本推理作家
協会賞(短編部門)を受賞した尾道大学日本文学
科准教授、光原百合さんが20年来、構想をあたた
めてきたギリシアの神話世界を舞台に若い男女の
愛と冒険を描いた書き下ろし長編「イオニアの風」
を中央公論社から発刊した。光原さんは「長年抱
いていたテーマがやっと完成しました。英雄の子
テレマコスと美しい吟遊詩人ナウシカアの二人と
一緒にギリシア神話の世界に旅していただけたら
幸いです一と話していた。
 光原さんがギリシア神話の本を手にしたのは中
学時代で登場する神々が魅力に溢れ、なかでもお
しゃべりでいたずら好きで気まぐれで意地悪なと
ころと情け深いところを持ち合わせたヘルメス神
に惹かれ、いつか愛すべき神々が活躍する物語を
書きたいという思いを持ち続けていた。発刊され
た「イオニアの風」の中心となるテレマコスとナ
ウシカアのことを書きたいと想いがつのったのは
作家としてデビューした直後の20年前、長年構想
をあたため実際に書き始めたのは9年前。「これ
までの人生のかなりの部分を、この物語と共に過
ごしてきたことになります。未熟さゆえに当初の
思いをどれだけ実現できたかわかりませんが、ど
うにか形にできて感無量です。書き終えた後、高
熱を出して二日寝込んだほどです」とあとがきに
しるし、ライフワークともいうべき、この本に対
する意気込みを述べている。
 物語は人間の歴史に介入してきたオリュンポス
の神々が人間に三つの試練を与える、巨大な木馬
に兵をひそませたトロイア戦争を巡るふたつと巨
大な魔物を巡るひとつ、英雄の子テレマコスと吟
遊詩人ナウシカアの若い二人が人間の未来を拓く
ため、この試練に挑む愛と冒険の物語で、ギリシ
ア神話の知識がなくても一気に読ませる。
 光原さんは「ギリシア神話は奥が深くて面白い
です。『イオニアの風』をきっかけにギリシア神
話に親しんでいただけたら、これほど嬉しいこと
はありません−と話していた。
 定価は税込みで2100円で9月7日から市内の啓
文社で発売する。
 光原さんは98年「時計を忘れて森に行こう」で
小説デビュー、02年「十八の夏」で日本推理作家
協会賞(短編部門)を受賞、ケルト神話に触発さ
れたファンタジー「銀の犬」も高い評価を得てい
る。「月星夜の夢がたり」、「最後の願い」など
発行、受賞作「十八の夏」はTBSでテレビドラ
マ化された。



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