2009年5月20日(水)
全て国産素材で
 大阪から縁ある尾道へ
  写真家鴻池和雄さん手打ち蕎麦店を
鴻池さん写真作品
 大阪で活躍するプロカメラマンが、尾道で日本
蕎麦店を−。旧市街地では珍しい手打ち蕎麦の店
「そば鴻(こう)」が先週末、十四日元町(中国
銀行前)にオープンした。蕎麦好きが高じての心
機一転で、「尾道の方に蕎麦のほんとうの美味し
さを知って頂きたい」と張り切っている。
                 [幾野伝]
 大阪市中央区から転居し日本蕎麦店を開いたの
は、鴻上和雄さん(62)と三恵さん(58)夫妻。
大阪に生まれ育った鴻上さんは、日本大学芸術学
部写真学科を卒業、プロカメラマンとして建築関
連(新築店舗や住宅など)の商業写真を中心に撮
ってきた。
 もともと蕎麦が好きだったが、3年ほど前から
は蕎麦打ち教室に通うなど研究を深めて、さらに
自分の蕎麦屋を持ちたいと計画。三恵さんが福山
出身、DM用の写真などを撮影している備前焼作
家、佐藤苔助さんとも13年ほど付き合いがあるこ
となどから、「やるなら尾道で−」と場所を選定
してきた。
 さらにここ10年近くで写真界は、フィルムのア
ナログからデジタルヘと一気に変わってしまった
ことも、転機への大きなきっかけになったと鴻上
さん。
 蕎麦は当日朝か前夜に全て手打ちで用意する。
近くの「水尾井」の井戸からもらって来るわき水
で蕎麦粉をこね、めん棒で手際よく打っていく
(=写真)。石臼で挽かれた茨城産の「常陸秋そ
ぱ」を「二八」で使うことからスタート、つゆも
北海道産の昆布と鰹で作り、本わさびなど素材は
全て国内産を使う。
 歯ごたえのある蕎麦の香りが口に広がり、手打
ちゆえの妙技を味わうことが出来る。今後は出雲
や九州産の蕎麦で、「一九」や「十割蕎麦」も試
していきたいと話す。
 全て手づくりのために出せるのは一日30〜40食、
多くて50食分。「蕎麦は奥が深く、観光客ではな
くて尾道の地元の人にほんとうの美味しさを知っ
て頂きたい」と鴻上さん。盛り蕎麦700円、と
ろろ蕎麦900円、炊き込みごはん200円など。
営業は午前11時から売り切れまで。
 店舗の設計デザインは大阪在住の友人で著名な
造形作家に依頼。「造船の町尾道」というイメー
ジから、外観は錆び付いた鉄の板を強調した黒い
色調でディスプレイ。一方店内(約20平方m)は
天井の梁を見せながらも、シックで明るい白色で
統一した。新浜2丁目、大田建築事務所(大田貞
男社長)が施工した。
 「この町は他と何かが違う−」と感じていた鴻
上さんは、以前から尾道によく足を伸ばしていた
が、20年ぐらい前からはカメラを手に、何気ない
尾道の日常風景や造形物を「或る日」のタイトル
で、モノクロフィルムに撮り収めてきた(=写真
の作品)。今は見ることが出来ない消えた尾道の
風景もたくさんある。
 今回店舗の上階も合わせて改築し、住所を移し
て「尾道人」になった。準備から開店にあたって
近所などにあいさつ廻りしたが、「尾道の皆さん
に優しくして頂いています。焦らず自分達のベー
スでやっていきたい」と新天地での出発にひとま
ず安堵のようすだった。

中国銀行はこちらで、"その前"とのこと



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