2009年5月16日(土)
22日落慶神事
宮大工、豊田さんが釘1本使わず昔のまま再現
 高尾稲荷神社市民の浄財で新築
  風情漂う路地奥に鳥居が映える
施工の様子
 幕末に創建され、一世紀半にわたり地域の守護
神として、花街新開の女将さんや綺麗どころの商
売繁盛の福徳神として信仰が集め、大林映画「ふ
たり」のしっとり風情のあるワンシーンに登場し
観光スポットとして今も注目を集めている久保一
丁目、三好屋町内会(島本実夫会長)の「高尾稲
荷神社」が市民や観光客の浄財で新築され、22日
午前10時から落慶神事を執り行う。新築された朱
色のお稲荷さんは五月晴れのもと、ひときわ映え、
三好屋小路を行き交う人の目を楽しませている。
 新築を請け負つたのは数寄屋建築を手がける長
江2丁目、豊田工務店、豊田頼孝さん(62)と長
男、訓嘉さん(32)。豊田さんは26才から40才ま
で京都で数寄屋普請を修行、宮大工も経験し日蓮
宗総本山身延山の神社や伊予三島の王子神社改築
に携わった。
 尾道百選に選ぱれた三好屋小路の中程にある
「高尾稲荷神社」は本殿にあった棟札から将軍徳
川斉昭が塾居、吉田松陰らが処刑された幕末の安
政6年(1859)に創建。その後、改修のため本殿
を調べていた豊田さんらが昭和11年5月の棟札
を見つけ、一度改築され、73年経っていることが
判明した。本殿は朽ち果て、朱色の鳥居や玉垣は
倒壊寸前の痛ましい姿になりはてていた。当初、
文化財的に価値の高い高尾稲荷神社を改修しよう
としたが思っていたより老朽化が著しく、改修で
は持たず新築に切り替えた。
 豊田さん親子は元のお稲荷さんを忠実に再現、
昔取った宮大工の腕前で釘1本使わず本殿を新築、
銅板の本殿屋根には如意宝珠を描き、檜造りの本
殿は向こう100年は持つように外側に防腐防虫
を施し本殿を開けると檜の匂いが漂うよう知恵を
凝らした。祠を開ける鍵は京都から海老錠をわざ
わざ取り奇せ、祠を荘厳に装った。
 お稲荷さんのシンボルとも言える朱色に映える
鳥居と玉垣は新調、目にも鮮やかな色合いで五月
晴れのもと、傍らに商家の名残をとどめる建物が
迫る風情ある路地奥にひときわ映えている=写真。
 豊田さんは「釘を使わず、木をはめ込む作業は
苦労しました。メンテナンスさえしっかり行って
いけば100年は持ちます」と太鼓判を押してい
た。訓嘉さんは「神社の建築は初めてで知らない
ことばかり。やっていて楽しかったです」と初挑
戦で一仕事終え、満足そうだった。
 世帯が10戸、平均年齢が80才を越え、まさに限
界集落を地でいく三好屋町内会は手持ち資金が20
万円、新築費用40万円の半分しか賄えず募金を呼
びかけたところ市民や東京在住の尾道出身の著名
人、新開の女将さん、地域の町内会から20万円を
越える浄財が寄せられ、新築に漕ぎ着けた。
 元市議で三好屋町内会会長、島本実夫さん(93)
は「1世紀半にわたり地域の守り神として由緒あ
る、お稲荷さんを是非とも後世に残したいという
一念でやってきました。みなさんの心のこもった
寄付を頂戴して、ようやく新築することができま
した。感謝にたえません」とお礼を述べていた。
 22日(金)午前10時から長江艮神社、永井政昭
宮司を招いて落慶神事を執り行う。引き続き恒例
の「卯の祭り」を開催する。夜7時からは尾道大
学学生が稲荷神の使いの狐に扮し、灯明を捧げる
献灯行列をおこなう。



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