2009年3月14日(土)
大林映画の『聖地』
空き家20年、家主によって再生へ
 大正末期洋風民家《転校生》の弓場邸
  まちなみ形成事業で市補助金を
洋風建築と庭木
洋間
 大林宣彦監督の尾道映画《転校生》で主人公の
住む家として撮影に使われ、その後長年空き家に
なっていた西土堂町の洋風民家「弓場邸」が、尾
道市の「まちなみ形成事業補助金」を受けて再生
されることになった。アトリエ兼作品発表のサロ
ン的な空間として生まれ変わる予定。 [幾野伝]

 まちなみ形成事業は、「個性的で風格ある尾道
らしい町並みを創出する」ことを目的に、景観形
成重点推進地区内の「歴史的で尾道らしい雰囲気
を残す建造物・工作物」の整備に対して、外観部
分について事業費の四分の三、上限200万円を
市が補助する制度。
 事業がスタートした2003年度の「宮辺海産」
(土堂海岸通り)をはじめ、05年度の「秋元洋服
店」(久保本通り)、今年度の「津留邸」(西土
堂町)に続いて4軒目となる。弓場邸は津留邸と
同じく尾道駅裏の山手地区の洋風民家群の一つ。
 所有者の弓場さんが補助金の交付を申請、先月
27日に開かれた尾道市まちなみ形成推進委員会
(委員長=稲田全示尾道大学教授、委員6人)で
審査、200万円の交付を決定したもの。
 弓場邸は大正末期の建造で木造平屋建て。補助
対象の外観部分では、カラーベストの屋根葺き替
え、外壁補修と塗装、腰板の補修と一部取り替え
が主な工事となり、内装も改修する。
 大林宣彦監督の映画、尾道三部作の《転校生》
(1981年公開)では、小林聡美演じる主人公の女
の子「斉藤一美」の家として使われ、多くの印象
的な場面が撮影された。ロケ地巡りをする映画フ
ァンにとつては『聖地』として知られるが、家主
の転居から銀行の社宅に使われた後20年近く空き
家になり、一時期は売却の話も浮上していた。
 夫人同士が旧知で、映画の繋がりもあって長年
管理を託されてきた大谷治さんは「尾道の中でも、
エネルギーを注いで残していくべき象徴的な建物
で、誰よりも愛情を持っている弓場さん自身によ
って再生されることが決まり、最善の結果に安心
した」と話している。
 尾道市では新年度も、形成補助事業費として2
02万円を予算計上している。
(=写真は《転校生》の撮影前、ロケーション・
ハンティングの時に撮られた弓場邸。いずれもP
SCの提供で、美術監督薩谷和夫さんが遺したコ
レクションから)。



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