2009年2月13日(金)
平谷祐宏市長も
南原清隆さんと撮影秘話など語る
 監督表明「また尾道映画撮る」
  《その日のまえに》舞台あいさつ
舞台あいさつの様子

かつての映画館の賑わいを再現したかのよう
 映画《その日のまえに》の上映が20日まで続い
ているシネマ尾道で11日、大林宣彦監督(71)と
ちょうど13日で44歳になる主演の南原清隆さんに
よる舞台あいさつが行われた。平谷祐宏市長も参
加するなか監督は、作品に込めた思いなどを披露
しながら、「若者達によって新しく元気になりつ
つある町を見ていて、尾道でまた映画を作ろうと
いう気持ちに今なっている」と古里での次回作へ
の意欲を明らかにし、満員の会場から大きな拍手
がわいた。            [幾野伝]

 昼の部、夜の部で2回舞台あいさつが行われ、
それぞれ約200人ずつが入館。司会役をつとめ
た監督夫妻の愛娘で映画感想家の大林千茱萸さん
が「父と母の映画を尾道で上映することが出来、
こんなに多くの方においで頂き感謝しています」
と冒頭述べた。
 監督の「ヨーイ、スタート!」という大きな掛
け声で、南原さんが上下白の明るい服装で軽快に
登場すると、劇場内がいっそう華やいだ雰囲気に
包まれた。
 尾道の対岸、瀬戸内海を挟んだ高松市で生まれ
育ち、これまで何度も尾道を訪れている南原さん
は「高校生の時に《転校生》を見て、映画に恋を
し、尾道に恋をした。尾道はなんて素晴らしい所
なのかと思った」と、学生時代に大林映画の話題
を通じて内村光良さんと仲良くなり、それが「ウ
ッチャンナンチャン」の結成に繋がったと伝えら
れるルーツの一端を紹介。
 尾道上映のお祝いと鑑賞に訪れた平谷市長が登
壇、「映画館がなくなって寂しい思いをしていた
が、皆さんの協力で再びオープンして、こうして
大林監督、南原さんに来て頂いて、つくづく尾道
は良い町だと思つている」とアドリブで答えた。
 監督は「若い人が頑張って、尾道が良い町にな
りつつあるなあと思うし、とても嬉しい。若い人
達は古い尾道が好き。古い尾道を活かしながら、
これに自分達の時代の何かを加えていこうとして
いる。温故知新が一番大事。古い物は壊せと、こ
れまで随分大事な物を壊してきたが、今の若い人
は古い物は大事しながら、新しい尾道を創ろうと
している。これは町の成長と言える」と印象を語
った。
 これを受けて平谷市長は「路地の中に若い子達
が店を出して生活、千光寺山の南斜面に家を借り
て尾道の暮らしを楽しんでいる。そういう価値観
をもった子達がこの映画館もそうだし、たくさん
尾道の町に来て住んでもらっているのが今ではな
いか」と話した。
 当日の朝、在来線尾道駅に降り立った南原さん
は「10数年振りに来て駅前は変わったけど、瀬戸
内海の汐の香りが良い」と尾道の感想を語り、
「大林映画で青春時代を過ごしたので、今回出演
の話しをもらった時は、やるやると気軽に答えた
が、主役と聞いてどうしようか大丈夫かと思った。
これまでは映画もドラマも、どこかお笑いが入っ
ている役だったが、今回は一切ない。嬉しかった
が、大変なことになったなぁと思った。でも監督
から役になる感覚を教えてもらい、充実していた」
と撮影時の様子を披露。
 監督は「この映画を作るにあたって、どれだけ
お客さんが笑えるか、明るく楽しく、希望に満ち
た気持ちになれるのかに集中した。死ぬことは確
かに生が終わることだが、本当に終わりなのか。
生と死は対極にあるものではなく、一体化してい
るものだということを描きたかった」と作品に込
めた思いを語った。
 さらに、「普段見られている今の映画やテレピ
ドラマとは、少し舌触りが違うと思う。今の映画
やテレビはリアリズムで作られている。でも私は、
ウソから出たマコトが映画にはあっても良いので
はないかと思う。映画では見る楽しみ、その次に
語り合う楽しみを体験してほしい」を呼び掛けた。
 南原さんはあらためて、「自分が大林監督の映
画に出て、しかも尾道の映画館で見てもらえるな
んて夢にも思っていなかった。ぜひ今度は監督の
尾道での映画に出たい」と意気込むと、「ぼくも、
若者達によって新しく元気になりつつある町を見
ていて、尾道でまた映画を作ろうという気持ちに
今なっている」と明かした。
 「これまでは大好きな尾道が、開発という名の
もと壊されていくのが悔しくて、町守り町残しの
映画を作ってきたが、この映画館も含めて今の若
い人達は古き良き物をきちんと守り、残しながら
そこに未来へ続く新しいものを入れていこうとし、
とても良い尾道になっている。だからこれから作
る尾道の映画はきっと、今度は未来に目を向けら
れるだろうと思う」と締めくくり、大きな拍手を
受けた。



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