2008年10月18日(土)
「世界が注目」2回続けては異例
 架橋問題イコモス中止勧告を
  日本政府には許可延期要請
  カナダでの総会で決議
 世界遺産の候補地調査や価値を審査するユネス
コの諮問機関「イコモス」(国際記念物遺跡会議)
が、このほどカナダーケベック市で開かれた第16
回総会で、福山市鞆の浦の埋立て架橋計画の中止
と代替案の検討を求める勧告文を採択した。前回
総会に続く勧告で、同じ文化遺産保護について2
回続けて採択決議されたのは初めてだという。
 勧告文では、「鞆の浦の港と町の周辺の風景は、
一体として国際的な重要性を獲得するのであって、
これらを別々に切り離して評価できるものではな
く、それゆえ鞆の浦の保存を図る場合には、隣接
する海、背景となる山や島といった視覚環境と、
その機能も含めて鞆の港が歴史的に果たしてきた
役割(特に日本と韓国とを結ぶ文化の道の一部で
あったこと)のすべてを含める形で行われるべき」
と指摘。
 日本国政府に対しては事業認可の延期を強く要
請、広島県と福山市にはそれぞれ国土交通省、広
島県知事への認可申請の取り下げ、事業計画の廃
棄と価値を損なわない代替案の再検討を求めてい
る。
 勧告は2005年の中国西安での15回総会でも採択
されており、日本イコモス国内委員会(前野まさ
る委員長)は「2回続けての勧告は例がなく、改
めて鞆の浦の保存に世界の専門家が注目している」
とコメントしている。

鞆の浦訴訟で裁判官が現場視察を
 福山市鞆の浦の埋め立て架橋計画をめぐる免許
差止め訴訟で16日午後、担当裁判官による現場視
察が行われた。
 視察は、「鞆の浦の素晴らしさを実際に見ても
らいたい」と昨年7月の第1回の口頭弁論の時か
ら原告側が要望していたもの。
 住民を中心に全国からの支援によって今年旅館
に再生された「御船宿いろは」や雁木が今も使わ
れている常夜灯前の石畳広場、県道輛松永線など
9つのポイントを40分かけて歩き、各地点で原告
団のメンバー、被告側(広島県)の双方から意見
を聞いた。
 視察を終えて原告団と弁護団が会見、松居秀子
事務局長は「架橋が出来たら、コンクリートの壁
が目の前を遮り、景観を壊してしまうという現実
が分かって頂けたのでは」と語った。
 さらに大井幹雄団長は「道が必要なことは分か
るが、されど埋め立て架橋は一番つまらないやり
方。これまで20年間に亘って、山側トンネル案や
埋設案などあらゆる手段の提示もしてきたが、行
政はこの埋め立て架橋ありきでやってきた。私達
も本当はけんかなんかしたくない」と改めて心情
を述べた。
 さらにイコモスの勧告については、「重く真摯
に受けとめてほしい。このままでは、孤立した福
山市になってしまう」と憤っていた。 [幾野伝]



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