2008年10月4日(土)
なかた美術館
77〜88年の瀬戸内風景モノクロで蘇る
  小林伸一郎写真展「海人」始まる
展示の様子
テープカット
 潮見町、なかた美術館(中田冨美館長)で3日、
小林伸一郎写真展「海人UMIHITO(尾道市、
山陽日日新聞社など後援)が開幕した。かつてあ
った瀬戸内の島々の暮らし、風景がモノクロ写真
から蘇ってくる。11月30日まで。   [幾野伝]

 写真家、小林伸一郎さん(51)は束京生まれで
専修大学経済学部の卒業。スタジオ、出版社を経
て1988年に独立。準太陽賞(91年)、コニカ写真
奨励賞(94年)、東京国際写真ビエンナーレ・キ
ヤノン賞(97年)を受賞。
 写真集は1991年の「Tokyo Bay Si
de」を皮切りに、高度経済成長の象徴ともいえ
るスクラップ&ビルドをテーマにした「廃墟遊戯」
(メディアファクトリー)、「廃墟漂流」(マガ
ジンハウス)、「NO MAN’S LAND軍
艦島」(講談社)などを次々発表。「高速道路や
ダムの建設途中の景観を捉える一方、朽ち果てて
自然に戻ろうとする廃墟を独自の美意識で切りと
り、衝撃をあたえた」。写真集「亡骸劇場」、
「東京ディズニーシー」で2007年度講談社出版文
化賞を受賞している。
 今回初めてとなる尾道展では今から20〜30年前、
作者がまだ20代だった1977年〜88年のの瀬戸内の
島々をはじめ、海辺に暮らす夏の人々に焦点をあ
てた作品が並ぶ。昨年暮れ、事務所にあるロッカ
ーの奥から木箱に入った大量の白黒ネガを見つけ
たのが全ての始まりで、一度もプリントしたこと
がなかった未発表の70点が、現在の我々の有り様
を問うている感じ。
 いずれもモノクロームで、ポスターや新しい写
真集の表紙を飾っている「トンネルの向こうの海
水浴場、子供達の歓声が響いた」をはじめ、島を
結ぶ渡廻船の朝の風景を捉えた「小さな島から船
で通学する制服のふたり」▽静かな工場地帯の
「マッチ棒のような煙突がある港街」▽日焼けし
た上半身が印象的な「採石場で岩を砕いていた男
の昼休み」など独特な夕イトルが付けられ、高度
経済成長で海辺の様相は大きく変わりつつも、変
わることがない人情や温かみなど、作者の思いが
伝わってくる。
 初日午前9時からオープニング式があり、中田
館長が作者の経歴と、今回に続く第二章として現
在、小林さんがカラー写真で新たに尾道一帯を撮
り収めていることを紹介した。
 来賓の平谷祐宏市長は「尾道に暮らす私達は、
『海の人』という言葉の響きに哀愁を感じ、モノ
クロームの写真からはかつての地域を振り返るこ
とも出来る」と当地での展覧会を讃えた。
 小林さんは「初めて尾道に来たのが21歳の時で、
駅前の旅館に素泊まり2000円で3泊した。当時は
まだ橋がなく、船で島々へ渡ったがいっぺんに好
きになった」と経緯を語り、「それから7、8回
は来ている。町はきれいになったが、いつ来ても
人情や明るさは変わらない。歩いていると、町の
人にこんにちはとあいさつされる。毎年1冊づつ
写真集を出しているが、いつもはその写真集を売
るために作品展を開くが、今回は逆。今の尾道、
瀬戸内を見てどう感じるか、渾身の力で撮ってい
る」と今後の展望も交えながらあいさつした。
 テープカットして開幕を祝った(=写真下で、
市長の隣が小林さん)。
 月曜日は休館(祝日の場合は翌日)。一般70
0円、大学生500円、中学・高校生400円。

場所はこちらの「な」



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