2008年6月29日(日)
【祇園さんと時宗常称寺】展資料調査
 江戸時代の絵巻見つかる
  雁木から海へ放り込まれる神輿
雁木から海へ落ちていく神輿と人々
 7月4日に開幕する【祇園さんと時宗常称寺】
展の準備が大詰めを迎えている最中、江戸時代に
描かれた尾道祇園祭・三体みこしの絵巻が見つか
り、ビジュアル資料としては現在確認されている
中で最古のものになるとして、調査にあたった関
係者を驚かせている。
 絵巻は『芸備州』なる題で、天保7年(1836)、
馬場竹琴(ちっきん)、雅号(しゅうあん)※1
による筆。広げるとかなりの長さになる絵巻は、
全般的に見渡したところ風俗絵巻といった内容で、
風景や行事、花見や宴席、旅姿など種々の事柄が
描かれ、部分的に添え書きが見られる。
 それら多種多様な事柄の内の一つに、雁木から
海へ放り込まれようとしている神輿が描かれてお
り、その形態と神輿に付された三つ巴の紋章から、
尾道祇園祭である事が判明した。
 二基の神輿が雁木上で激しく揉み合い、その内
一基が担ぎ手もろとろ尾道水道へ今まさに飛び込
もうとしている情景で、傍らには多くの見物客が
群がり、一部に裃姿の役人とおぼしき人物も見え
る。また、既報の堀田翠峰(すいほう)氏による
絵図同様、船見物も多かった事が偲ぱれ、船の屋
根へ上がって見物しているのが面白い。
 絵巻を尾道(学)的に眺めると、山波の船番所、
尾道町奉行・木村幾三郎や頼山陽の子・聿庵(い
つあん)なども登場しており、祇園さん以外にも
見所が多く含まれる。
 絵巻は福山市今津町の松永書店のご主人・佐藤
善久さんが所蔵するもので、地元的にこれは貴重
かつ大事なものであると、長らく非売品として大
切に保管されていた。
 研究熱心な佐藤さんは、マイナーな馬場竹琴を
調べあげ、竹琴の情報を記載する江戸後期の『海
内偉人姓名簿』(釈志道編)まで入手している。
また今回、祇園さんで光が当たった事を受けて、
祇園さんについて全国各地の例から、その紋章に
至るまでとことん調べ上げ、それらを分厚いファ
イルにまとめられ、調査にあたった尾道学研究会
古文書担当の半田堅二さんらを驚嘆させていた。
 佐藤さんは、「今回は祇園さんという括りで出
品させてもらいますが、絵巻全体を展示公開する
機会を設けられてもいい様に思います」と提案し、
確かにその値打ちがあると研究会企画事務局メン
バーも納得していた。
 当初は、祇園祭の部分を写真パネルで展示する
予定だったが、佐藤さんのご厚意により現物を展
示する事となった。
 公開は7月4日(金)から、本通りの街かど文
化館で始まる夏の企画展「祇園さんと時宗常称寺」
にて。

場所はこちらの「お」



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