2008年6月10日(火)
映像コンテスト
「五分間ノ尾道物語リ」
 自らの人生と向き合う
  倉敷芸大生が大賞グランプリを
授与
高橋審査委員長
 「環境・ふるさと・絆」をテーマにした映像コ
ンテスト「五分間ノ尾道物語リ」の第2次審査会
が7日午後、しまなみ交流館で開かれた。ノミネ
ートされた全15作品が上映され、4人の特別審査
員と50人の市民審査員らが選考、栄えある第1回
グランプリと続く準グランプリには、尾道出身の
倉敷芸術科学大学の現役学生の2作品が選ぱれた。
                 [幾野伝]

 主催者を代表し田遵良造・尾道東ロータリーク
ラブ会長が「昨年11月から作品募集し58点が寄せ
られ、第1次審査では甲乙付け難かったが、本選
に進む15作品を選んだ。選外にも力作がたくさん
あった。ぜひ全作品を観てもらう機会を設けたい」
とあいさつ。
 1作品づつ上映され、高橋玄洋(劇作家)▽稲
田全示(尾道大学教授)▽村上宏治(写真家)▽
花本健治(尾道キネマクラプ会長)の特別審査員
をはじめ、河本清順(尾道に映画館をつくる会代
表)、野田克仁(尾道ケープルテレビ)の両氏と
公募した50人の市民審査員、尾道、尾道東の両ロ
ータリークラブ会員50人の合わせて106人がそ
れぞれ良いと思う作品5つを選ぶ形で審査が行わ
れた。
 集計の結果、佳作4作、入選5作、優秀賞3作、
シニア賞1作に続いて、準グランプリ(賞金10万
円)には102歳になる自らの曾祖母の生き様を
辿った倉敷芸術科学大学2年、高岡尚司さん(倉
敷市)のドキュメンタリー「僕のひいぱあさん」、
大賞グランプリ(30万円)には同じく倉敷芸術科
学大3年、永田淳さん(福山市)の「尾道の坂や」
が選ぱれた。2人とも尾道市の出身。
 大賞受賞作は、古里尾道に帰って妻と家業を継
いだ酒屋の若者の覚悟と友情、家族愛をほのぽの
と描いたショートムービーで、「本当に尾道に生
まれて良かった」と最終盤に主人公がつぶやく場
面があり、観る者を惹き付けた。
 表彰式では高橋審査委員長が「素晴らしい作品
ばかりで驚いた」と感想を述べ、「私は大崎下島
の大長生まれで、めったになかったが、みかん穫
りが終わった後など、尾道に来て映画を見ること
が楽しみだった。戦後初めて見たのがマキノ正博
監督の『待ちぽうけの女』で、尾道松竹で見たと
思う。脚本は新藤兼人さんだった」と想い出を語
った(=写真下)。
 最後に「今後は集められた作品を、主に尾道の
人が見て勉強するものにするのか、他所の人が見
て尾道をより知ることに役立てるのか、主催者の
姿勢が問われる」と課題を投げかけた。
 受賞者に一人づつ表彰状と副賞が手渡され、大
賞グランプリの永田さん=写真上=は「初めは賞
を獲ることだけを考えていたが、見てもらう人が
あって初めての作品であると思うようになった。
尾道を撮るということは、ただ町を撮るというこ
とではなくて、住んでいる人があっての尾道なの
で、人にスポットを当てて作った」と作品をめぐ
る思いを語った。
 永田さんは大林宣彦監督(70)が客員教授をつ
とめる倉敷芸術科学大メディア映像学科で学んで
おり、監督を同大学に招いたCMディレクター、
小出肇教授(53)のゼミ生。生まれた向島町で高
校卒業まで過ごした。今回自身で脚本を書いて準
備した上で、4月の終わりにロケハン、5月の連
休中に学生仲間にスタッフと出演で協力してもら
い3日間で撮影した。
 「尾道の方には、快く撮影に協力頂き、これが
尾道なんだと友人達も驚いていた」と永田さん。
「古里で家業を継ぐという主人公は、今の自分
(卒業後は東京に出て映像作家になりたい)とは
丸っきり反対の生き方であり、もう一人の自分と
向き合ってみた。わずか5分間で何が伝えられた
のか、少しでも共感してもらえたらうれしい。第
一線で活躍する大林監督は憧れです」と話してい
た。



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