2008年6月3日(火)
NHKの毛利さん
「尾道人」が随所に登場する「尾道本」
 「世界遺産と地域再生」
   亀田市長以降の「まちづくり」を問う
表紙
 尾道(長江)出身でNHK解説委員毛利和雄さ
んが、世界遺産登録をめざすまちづくりをしてい
る「尾道」や、埋め立て架橋問題に揺れている
「鞆の浦」などを素材にした「世界遺産と地域再
生」(新泉社刊、本体1800円)をこのほど上梓し
た。「まちの活性化とは?」を主に世界遺産を切
り口にして「まちづくり」を問いかけている。
 「帯」が同じく尾道出身の映画作家大林宣彦氏
で「この知恵が明日への資源だ」と題し、大林監
督は読者にこのように推薦の弁を語りかけている。
 『スクラップ・アンド・ビルド(壊して作れ)
の時代が終わり、日本古来のメンテナンス(修理
して維持)の暮しが再生されつつある今、古き文
化を明日に伝える世界遺産を目指すまちづくりが、
人の心に与える豊かさは計り知れない。毛利さん
の提言にぽくは深く共感する』−と。
 目次は順に「世界遺産ブーム」に始まり1.世界
遺産とは何か▽2.石見銀山が世界遺産になった底
力▽3.登録をめざす平泉の挑戦▽4.「坂のまち」
尾道、試行錯誤のまちづくり▽5.鞆の浦”世界遺
産訴訟”で結びは「6.問われるまちづくり」。
 このうち、本著のメインともいえる「尾道」編
は、「市長の提案、躍る市民と踊らぬ市民」の見
出しから始まる。
 大林映画三部作の舞台となった尾道で、02年の
仕事始めで亀田良一市長が世界遺産をめざす意向
を明らかにしたところから、その後のまちの動き
を客観的に迫っている。
 「尾道を世界遺産にする会」(池本士郎会長)〜
島居邸(出雲屋敷)から茶苑(園)文化〜爽籟軒。
小路と東京工大の真野洋介准教授〜志賀直哉・林
芙美子と清水英子、池田康子さん。平山角左衛門
と尾道テゴー座〜絵のまち四季展〜駅前再開発に
雁木。
 二つの高層マンション建設反対運動で小野鉄之
助・日暮兵士郎氏と「尾道じゅうにん委員会」、
戸田芳樹・かわぐちかいじ、高橋玄洋各氏に大崎
義男、吉井長三氏らの名前が次々と登場してくる。
 ついで、二度目のマンション騒ぎの勃発とその
後の景観整備にむけた取り組みを詳述後、空き家
バンクと再生ではガウディハウスと豊田雅子さん
にページを割いている。ついで「尾道ベンチャー
支援センター」、「尾道学研究会」、「どこでも
博物館」、「プラットフォームおのみち」など、
尾道のまちづくりの特性を丹念に拾い、この間の
「亀田語録」を随所に入れて全体を構成し、結び
で亀田市長の勇退と平谷市長の誕生まで記述、
「世界遺産推進課」の廃止まで言及している。
 「あとがき」で、「転勤族の自分が地域の問題
に取り組む」困難性を述べた後で、最後に鞆の浦
に触れており、著者の鞆の浦に対する思い入れの
深さがよく表れている。
 尾道における平成以降のまちづくりの取り組み
を、ほぽ客観的に網羅した毛利さんらしい「緻密」
さと「分析」は″傾聴″に値する。



ニュース・メニューへ戻る