2007年3月18日(日)
鞆の浦支援する会設立趣意書
 創造性豊かに発想の根本的な転換を
 危機に瀕する鞆の浦
 日本で最も美しく、歴史的にも重要な港「鞆の
浦」が今、危機に瀕しています。この鞆の浦港を
横切る道路と駐車場建設のために、埋め立てを伴
う橋の建設が、強行されようとしています。広島
県と福山市は、埋め立て工事に必要な国土交通省
の認可を、2007年度早々にも申請するべく、
行動しています。
 瀬戸内海の中央に位置する、古代からの潮待ち
港は、かつて万葉の歌に詠まれ、朝鮮通信使はそ
の美しさを「日東第一の形勝」と絶賛しました。
港から眺める瀬戸内海の景観、港へ入る時に迎え
てくれる常夜燈や落ち着いた家並みの心休まる景
観は、日本人のこよなく愛する心象風景の1つと
言えます。まさに、その鞆の浦の悲鳴が聞こえて
きます。
 完全にのこる唯一の歴史的港湾
 鞆の港としての、文化遺産としての価値は突出
しています。世界を見ても、港は時代とともに変
化しやすく、古い形態を残すものは極めて少ない
のです。その中にあって、鞆港は日本の近世の港
を特徴づける、雁木と呼ばれる階段状の船着場、
常夜燈、波止場、焚場という船の修理場、そして
船番所といったすべての要素が残っている唯一の
場所です。加えて、歴史的な見事な町並みがよく
残っています。最後の完全な歴史的港湾とその文
化的景観が日本から無くなる意味は極めて大きい
のです。
 住民の声・専門家の声
 埋め立て架橋に反対する住民団体「鞆を愛する
会」などは、これまで港の風景と町並みの全体を
受け継ぎ、魅力的で活力ある地域社会を再生すべ
く、知恵を絞り、精力的な活動を長年展開してき
ました。専門家による港の学術調査、町づくりワ
ークショップ、町並み保存の全国大会も開催され
ました。2000年には、保存に賛同する署名が、
全国的に2万名以上も寄せられました。住民達は
さらに、道路のバイパス方法として山側トンネル
案を提示し、都市計画などの専門家も交えた総合
的な検討の場の設置を行政側に何度も要望してき
ました。
 個性豊かな開発
 目先の利便性を求めるだけの従来型の開発によ
って貴重な財産を破壊するのは、長い目で見て得
策ではありません。自然環境と歴史文化の資産を
最大限生かし、個性豊かな質の高い開発を追求し
てこそ、地域の経済活性化への道が開けるのです。
例えば、イタリアの世界遺産アマルフィやポルト
ヴェーネレという小さな港町は、自然と歴史の蓄
積に恵まれ、その海と一体となった風景や空間の
魅力を現代のセンスで創造性豊かに生かすことで、
観光・文化都市として輝きを放ち、経済の活性化
を実現しています。鞆の町の開発にも、こうした
発想の根本的な転換が必要です。
 人類共通の遺産
 ユネスコの諮問機関で世界遺産の選定に大きな
力をもつイコモス(国際記念物遺跡会議)のメン
バーが現地視察して人類共通の遺産として高く評
価をしていますし、イコモス総会や学術専門委員
会などで、鞆の浦の保存に関する勧告が度々出さ
れています。住民達が熱心に取り組んできた世界
遺産登録の運動にも、現実味が出ています。
 住民の会
 このような中で、広島県と福山市の行政当局は、
二十年以上も前に決めた計画に固執し、埋め立て
を実現すべく、最後の行政手続きを始めたのです。
今鞆の浦を守り活力のあるまちを実現しようとす
れば、まず事業を差し止める行政訴訟を行って司
法の判断を仰ぎ、残された時間の中で全国規模で
の世論と政治の判断を仰ぐことしか、選択肢は残
されていないのです。直接の被害を受ける地元鞆
の住民たちの諸団体は、埋め立て架橋反対に結束
して立ち上がり、『鞆の世界遺産実現と活力ある
まちづくりをめざす住民の会』を結成して、埋め
立て架橋道路建設事業を行おうとする広島県と福
山市を相手に行政訴訟などを始めるとともに、真
に鞆の歴史的文化的な価値を将来に残して活用し、
魅力的で活力ある地域社会の実現を目指そうとし
ています。これは、やむにやまれぬ判断と察しま
す。
 支援する会
 このような住民の会の活動は、単に埋め立て架
橋の反対ではなく、鞆の未来、日本の未来、いや
世界の未来への遺産として残すことが出来るかど
うかという重大な問題だと考えられます。このた
め、全国的規模で住民の会を支援する会を設立す
る決意をいたしました。
 どうぞ、皆様におかれましては、この支援する
会の趣旨にご賛同をいただき、会員としてご参加
下さいますよう、そして浄財を寄せて鞆住民のま
ちづくり活動、訴訟活動をご支援いただきますよ
う、発起人一同とともに、お願い申し上げる次第
です。
            二〇〇七年三月十六日



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