2006年8月13日(日) 「海物」 古材再利用し70年代に 店主が大工の友人と築100年改修 |
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幼なじみの友人が協力して手作りの店を実現−。 尾道の町並みを形作ってきた古い建物を改修した アンティークな雰囲気の飲食店が旧市街地に増え ている。土堂1丁目、本通り中商店街にオープン した「鉄板や海物(かいぶつ)」もそんな一つ。 間口が狭く奥に深い尾道の典型的な商家を改修し、 1970年代の″赤ちょうちん″の居酒屋を再現 している。[幾野伝] 「海物」を6月末に開店したのは、尾道駅裏の 「いっとく」はじめグループ店で7年間修行し、 晴れて独立した斉藤俊介さん(31)。「自分で店 をやる時には、サラリーマンがちょっと立ち寄れ る感覚で、尾道駅に近い所」と決めていた。昨年 末から数ケ月探してやっと、元カメラ店で空き店 舗になっていた築100年の古家に行き着いた。 向島町小歌島で育った斉藤さんは、祖父に手を 引かれて歩いた20数年前の尾道の町並みが自分に とっての原風景と言う。「とにかく古い物が好き で、残していきたい。尾道はその古い物だけでな く新しい物が共存する町だから面白い」。 幼なじみの大工、小松英正さん(32)が店の改 修で全面協力した。長年空き家だったために傷み がひどく、雨漏りもあったが、民家の解体現場な どを回って古材を譲ってもらい、柱や板塀に再利 用。玄関口のガラス戸などは、ネット・オークシ ョンで買い、店に合うように自分達でアレンジを 加えた。2階にも吹き抜け風の和室があり、昔な がらの日本家屋の造りとユーモアを味わえる空間 にしている(=写真左)。 業者に依頼すれば数週間で出来る工事を、斉藤 さんも金槌やノコギリを手に、2人の力だけで2 ケ月半掛けて完成させた。「友人もたくさん来て、 作業を手伝ってくれたんです」。トタンの波板や 古材の表面のザラザラ感をあえて表に出す演出方 法。60〜80年代のマンガキャラクターの人形や看 板、映画ポスターを貼って、レトロな雰囲気を自 然に作っている。 ″尾道茶の間″が店のモットー。「古い物を見 て、年配の方は懐かしいと言われ、当時を知らな い若者はそれをカワイイと表現する。食を通じて 世代を超えた会話、交流が生まれたら嬉しい。腹 一杯、そして元気一杯になって帰ってもらえるよ うな店にしたいです」と意気込む。アルバイトも あえて60歳と20歳の女性2人を起用しており、あ らゆる年代層に受け入れられる店を目指している ことがうかがえる。小松さんは「古材を探して、 適材適所に組み合わせるのにとても苦労しました。 斉藤君のイメージを大切にし、お互い妥協したく なかったので、本音でぶつかり合うこともありま したが、やり甲斐がありました。完成した時は本 当に嬉しかったです」と話している。 |