2006年6月9日(金)
森岡久元さん
尾商高、関西学院時代から同人誌を
「古里への思い」小説に
 昭和30年代暮らし活描『尾道物語 純情編』を上梓
森岡氏  表紙
 [尾道東京事務所から情報提供]古里尾道を舞台
にした小説を書き続けている会社社長森岡久元さ
ん(65)が、新作『尾道物語純情篇』を上梓した。
作品では森岡さんが幼児期から高校卒業までの青
春期を過ごした昭和30年代の尾道のようすが描か
れており、自身の体験などをもとにした短編6作
品からなる。発行所は澪標(大阪市)で定価は本
体1700円。すでに全国の書店に並んでいる。
                 [幾野伝]
 ◇「渡船場の少年たち」−渡船場と向島◇「ア
イスキャンデー屋の二階」−長江通り◇「手のひ
らの記憶」−土堂小の陸橋◇「寺の下の映画館」−
防地ロ◇「熱中症」−吉和海岸◇「時のひずみ」
−久保町丸山の6遍。いずれも主人公の暮らす尾
道が舞台で、商店街や狭い路地、山手の坂道、尾
道水道など当時の賑やかで生き生きとした町、生
活のようすなどが文中に散りぱめられており、特
に尾道人にとっては見馴れた風景が蘇ってくる感
じ。
 「寺の下の映画館」では、大学への進学が決ま
った18歳の主人公が、太陽館(作品中では邦画の
大洋館)で恋愛映画を見ていた時にたまたま隣に
居合わせた着物姿の客に「大人の女性」を感じ、
居眠りするその客との肌の触れ合いに青い快感を
覚える。その後の意外な場所での再会をめぐって、
主人公の心と体の動きを描く、文字通り″純情ス
トーリー″。
 森岡さんは母親の古里であった尾道に4歳の時
から暮らし、小学校は久保に4年生まで、その後
土堂に転校し長江中、尾道商業高校に通った。尾
商では当時活動が盛んだったという文芸部に所属、
同人誌に小説を書き始めた。関西学院大学文学部
に進学、在学中に同人誌「姫路文学」に参加、本
格的に創作を始めた。
 しかし卒業後は企業に就職、1971年には東
京で会社を興して経営者になり、仕事が忙しく長
年筆を休んでいた。それが11年前、休刊になって
いた「姫路文学」が復刊すると友人から聞いて、
かつての情熱がわき上がり、執筆を再開。200
0年には、同人誌に発表していた「尾道渡船場か
いわい」が「神戸ナビール文学賞」を受賞、他の
尾道物4遍を収録した同名書を同じ澪標から発刊
している。
 「ストーリーの7、8割は私の体験で、これを
もとに色付けしてフィクションにしています」と
森岡さん。コンピュータ関連部品の販売会社(中
央区京橋)を経営しながらの執筆で、今も毎年5
遍ほどは「姫路文学」や卒業生でつくる「別冊関
学文芸」に作品発表している。なかには歴史小説
もあり、いずれも尾道が舞台や尾道に関わりがあ
る内容だという。
 「今では尾道には同窓会の時に帰るぐらいで、
知らないことも多くなっていますが、それが逆に
興味にもつながって、新しい発見にもなります。
尾道の名が全国的に出ろことは嬉しい反面、不安
もあります。尾道という一つのブランドを傷付け
ることなく、磨いていってほしい」と話している。



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