2006年6月8日(木)
関西初の本因坊を
向島出身の半田道玄以来44年ぶりの関西挑戦
 囲碁のまちを全国に発信
  チャンス到来山田応援で力が入る関西総本部
対戦、花束贈呈、挨拶、青葉かおり4段
 尾道市・因島市・瀬戸田町の合併記念事業とし
て″誘致″した、第61期本因坊戦七番勝負の第三
局は7日午前9時から、尾道市山波町の西山別館
で始まった。
 対局場となったのは西山別館の門をくぐってす
ぐ右側の洋館風の2階の「朝日の間」。午前9時
の対局開始15分前には、立会の石井邦生九段、
井山裕太七段(いずれも日本棋院関西総本部所属)
をはじめ、三宅敬一・実行委会長、西山旅館の西
山忠夫さんらが着席し、対局者の入室を待った。
 対局4分前に挑戦者の山田規三生九段が先に入
室、間を置くことなく高尾紳路本因坊も入り、対
局前の約3分間、報道陣のカメラのシャッターの
音のみが響く、独特の静寂と緊張感が対局場を支
配した。
 定刻となり、NHKの中継が始まると同時に、
石井九段が「時間になりましたので、お願いしま
す」と声を掛け、黒番の山田挑戦者が時間を掛け
ることもなく盤面右上隅小目(17四)に初手を打ち
(写真)、高尾本因坊も左上隅4三の小目で応じ
た。
 ここで立会人と報道陣が退席。NHKでは、本
因坊秀策の故郷のPRと羽根直樹九段(前棋聖)
が青葉かおり四段(聞き手)を相手に序盤戦の解
説(10時まで)を行った。
 7日午後5時半ごろに「封じ手」、8日午前9
時から同夕の勝敗が決するまでの対局となる。
 二局目で不本意な碁を打った高尾本因坊にやや
固さがあると羽根九段の解説。
 前夜祭は6日午後6時から西山別館で開かれ、
立会の石井邦生九段を先頭に、大きな拍手に迎え
られて高尾本因坊と挑戦者の山田九段それに同じ
く立会の井山裕太七段の4人が入場し演壇に着席。
 対局者を含む中央の囲碁関係者が10人、主催の
毎日新聞社から18人、尾道市から8人、商工会
議所から佐藤会頭以下13人、市議会から12人、
協賛の大和証券から3人、市文化協会から4人、
市医師会から7人に因島・瀬戸田の囲碁関係者、
市内の囲碁愛好家それに福山、三原、府中など近
隣からの合わせて130人が参加し、地元関係者
の歓迎の意と期待の大きさを窺わせた。
 まず主催者を代表して毎日新聞大阪本社の出口
一男代表が挨拶。型通りの礼を述べた後、次の通
り第三局(尾道対局)の意義などを述べた。
 「本因坊戦は囲碁界最高の権威と歴史を誇る棋
戦です。江戸時代、京都・寂光寺の初代本因坊算
砂(さんさ)に始まる世襲制本因坊から、昭和に
なって毎日新聞社が主催となり、実力制本因坊へ
と生まれかわり、現在の高尾紳路本因坊まで14人
のタイトルホルダーが誕生しました。
 広島県での本因坊戦は、昭和20年、第3期の
対局中に被爆した橋本宇太郎本因坊対岩本薫七段
の対局をはじめ、今回で21回目です。尾道市で
は平成8年に、旧・因島市ではその翌年に行われ
ています。
 今回の会場となります尾道市は今年1月10日に
尾道市と因島市、瀬戸田町が合併し、新しい市と
してスタートしました。その合併記念事業として、
また、条例で囲碁を市民が愛好する市の技(わざ)
「市技(しぎ)」と定められている市として、市
を挙げて本対局を迎えていただきました。本当に
ありがとうございます。
 因島は、江戸末期に活躍し、碁聖(ごせい)と
仰がれた「第十四世本因坊跡目・秀策」生誕の地
として囲碁ファンに広く知れわたっています。ま
た、尾道市は志賀直哉、林芙美子など多くの文人
が足跡を留め、映画のロケ地としても有名です。
 さて、昨年、初リーグ入りで見事タイトルを獲
得された高尾本因坊は、初防衛を目指します。対
する山田規三生九段はリーグ戦の3者によるプレ
ーオフを制しての挑戦です。山田九段は日本棋院
関西総本部所属で、同総本部所属の棋士としては
初の本因坊戦挑戦です。また、関西勢としては、
関西棋院所属の半田道玄九段以来、44期ぶりで
あり、東西対決の面でもファンの注目を集めてい
ます。
 最後になりましたが、開催にご尽力いただきま
した尾道市さま、会場をご提供いただきました
「西山別館」さま、ご協賛いただきました「大和
証券グループ」さまに深く感謝を申し上げ、私の
あいさつとさせていただきます」。
 続いて若住久吾助役が歓迎の挨拶。出口代表が
本因坊秀策等について話されたので重複を避ける
として、一つだけ言わせてほしいとペンネーム庚
午一生(こうごいっせい)本名村上幹郎著「虎次
郎は行く」の中から、天保5年秋に虎次郎(秀策
の幼名)が父輪三に連れられ、長江艮神社の秋の
大祭に大相撲見物に来た際の逸話を紹介する熱の
入れよう。
 住吉浜にあった大紺屋(肥料屋)で、当主の渡
橋源兵衛と客人の加登灰屋橋本吉兵衛(竹下)が
囲碁の対局中で、父輪三が目を離した隙に、5歳
の虎次郎がこの対局を観戦、「コウになりそうじ
ゃ」と小声でつぶやいたことから2人が驚き、相
撲見物そっちのけで2人の大檀那が虎次郎と対戦
し、その尋常でない才能を見出した逸話を紹介、
高尾本囚坊らも熱心に聞き入っていた。
 佐藤志行議長は「囲碁文化」という言葉で囲碁
のまちづくりを進めていく(これを機に)と決意
を表明。
 青木栄治・大和証券福山支店長も、にわか勉強
ですがと断って、碁聖秀策の名手「耳赤の一手」
の故事を紹介し、尾道・因局・瀬戸田の合併記念
事業に相応しい盛り上げにひと役買った。
 ミス尾道から檀上の四棋士に尾道市からの花束
と記念品(帆布のバッグと桜の香水)を贈り、毎
日新聞東京本社学芸部の山村英樹氏が大盤解説者
の清成哲也九段、NHK解説者の羽根直樹九段と
青葉かおり四段(聞き手)、記録の佐々木毅五段、
山本賢太郎四段を1人ずつ紹介した。
 三宅敬一実行委員長の音頭で乾杯し祝宴に入っ
た。
 岩城公順中国囲碁名響本因坊、浅本博氏(日本
棋院広島県本部)はじめ因島から村上博徳氏(功
労者)や西河盛人・福井盛人両因島囲碁協会副会
長、稲葉薫・日本棋院瀬戸田支部長、それに腕自
慢の大福亘治さん、北熨斗睦人さん、高垣等市議、
漆原治夫医師ら多くの愛好家や金山幸平松愛堂社
長らが晴れの席で至福の時を過ごした。



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