2006年4月20日(木) 角川春樹さん初講義 尾道大学で「魂の一行詩」の創作指導 新しい文芸運動の地に 学生の秀句を編集誌上で選評も |
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1980年代には尾道映画《時をかける少女》 をはじめ、6本の作品で大林宣彦監督とコンビを 組んで一世を風靡、今回、東映映画『男たちの大 和/YAMATO』を製作した縁で市立尾道大学 の客員教授に就任した角川春樹さん(64)が18日 午後、初めての講義を行った。 [幾野伝] 角川さんは芸術文化学部日本文学科の2年生を 対象にした選択科目「文芸創作入門」(韻文分野) を担当。自ら提唱している季語にとらわれない俳 句、「魂の一行詩」についての創作指導を行う。 前・後期を通じて12月までの毎月1〜2回づつ、 計10回の授業となる。 初回は30人の学生と教員、取材記者ら15人が出 席。「私は富山県の出身だが、尾道を第二の古里 と思っており、新しい文芸運動の発祥の地にした い」と語り始め(=写真)、「俳句論ではなく、 実際に作ることで、みなさんの感性を引き出す授 業にしたい」と講義に込める思いを説明。 「文化の根底は言語であり、なかでも詩歌は日 本文化の基本、最も洗練された形で言語が要求さ れる。今はグローバル化の名の下で、小学生に英 語を教えることはしても、日本文学や日本史をな おざりにしている」と持論を展開し、「私は9歳 から俳句を始め、絵を描くことも好きだった。箱 根の温泉宿でたまたま出会った梅原龍三郎さんが 私の絵を見て『天才だ』と言い、それから絵画教 室に行かされた。絵は途中で止めたが、その後の 映画作りで役立った」と体験談も披露した。 魂の一行詩(俳句)については、「1.映像がき ちんと浮かぶか2.リズムがあるか3.作者の視点、 自分が存在しているかがポイント。口語体でも文 語体でも構わないし、こうしなくてはいけないと いうこともない。思いや悩みを素直に表現してほ しい。季語は入れることで説得力を増すが、無理 に絶対にということではない」とこれまでの俳句 の概念を越えたテーゼをゆっくりと話した。 早速15分間の持ち時間で全員が作句。「驚いた。 これならみんなできる。日本人は詩を生む力がズ バ抜けているが、半年で大きく成長するはず」と 学生を勇気づけた。次回の講義からは毎回3句づ つ宿題として提出、学生も交えて互選し、講評し ていく。さらに角川さんが編集発行している月刊 句誌『河』の誌上などで学生コーナーを設けて、 優秀句を選評していくという。 修了後、記者会見した角川さんは「大学の場で 初めて授業したが、面白かった。かつて大林さん の《時をかける少女》の時に尾道に来たが、長期 は初めて。大学での講義を最優先に考え、できる 限り長く続けていきたい」と意欲をみせた。毎回 東京から新幹線で、1泊2日の行程で尾道に通っ て来るという。大学の他に有志による句会でも指 導する。 |