2006年4月15日(土)
宮崎あおい
《あの、夏の日−》で大林監督の目に
 尾道で女優への第一歩
  NHK朝ドラの主演ヒロインに
天寧寺の渡り廊下
◎..またしても、尾道映画でデビューした若き
女優が大きく羽ぱたく−。新尾道三部作・第三
作の《あの、夏の日−とんでろじいちやん》
(1999年公開)の新人オーディションで大
林宣彦監督の目にとまり映画デビュー、その後
着実に女優の道を歩んでいる宮崎あおいさん
(20)が、先日から放映が始まっているNHK
朝の連続テレビ小説『純情きらり』で主演のヒ
ロイン、桜子役を演じている。
◎..宮崎さんは『あの、夏の日−』以降、『ユ
リイカ』(2001年)でカンヌ映画祭国際批
評家連盟賞を受賞、さらに『害虫』(02年)、
『NANA』(05年)など多くの映画、ミュ
ージカルで主演し、「今最も期待されている若
手女優の1人」と称されている。NHK朝ドラ
のヒロインは、オーディションを経て選ぱれる
のが通常だが、「優れた演技力と存在感が欠か
せない」と今回約40年振りに選考会なしで抜擢
されたという。
◎..新人、特に女優の発掘と起用には高い評価
がある大林監督。尾道映画でデビューし、その
後大きく成長した女優では、他に《転校生》の
小林聡美をはじめ、《時をかける少女》の原田
知世、《さぴしんぽう》の富田靖子、《野ゆき
山ゆき海べゆき》の鷲尾いさ子、《あした》の
宝生舞などが浮かぶ。《ふたり》の石田ひかり
は、やはりその後NHK朝ドラのヒロインにも
なっている。
◎..「大林組」の特徴であるが、撮影が行われ
る1〜2ケ月の間、出演者は出番が多かろうと
少なかろうと、特に若い俳優はみんな一つの
″家族″としてその町に滞在することが″義務″
づけられる。原田知世は《時かけ−》から12年
振りに訪れた尾道を「時が流れているのに、変
わらないでいられる、志のある尾道という町は
素敵ですね」とかつて語った。
◎..《あの、夏の日−》の時にはまだ中学1年
だった宮崎さんは、11歳で死んでしまう主人公
の思い出の中の淡いヒロイン役を演じた。出番
は決して多くなかったが、40日間の夏休みをま
るまる暑い尾道で過ごし、大きく成長した姿で
帰って行った。3年ほど前に、北海道の夕張国
際映画祭でたまたま再会したが、すでに名が出
ていたその時でも「尾道の町が懐かしいです−」
と笑顔で語っていたことを思い出す。
◎..尾道映画を第一歩として、その道を極めて
いく女優たち。もちろん、演者としての素質だ
けではなく、その者の人間としての内面をも深
く見抜く大林監督の目がまずはあってのサクセ
ス・ストーリーであるが、尾道という町が持つ
家族的な雰囲気が、女優に成り立ての若い心に
安らぎと自信をもたせ、何かを吸収して羽ぱた
いて行っていると考えれば、この町としてはと
ても嬉しく、誇らしいことではないか。
(=写真は1998年8月、《あの、夏の日−》
の天寧寺での撮影風景。三日月の窓に宮崎さん)。
                [幾野伝]



ニュース・メニューへ戻る