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2006年4月14日(金) 製作工房完成 備後象眼の第一人者、今中興道・良寿庵主 念願の後継者見つかる 禅と托鉢で悟りを開き印可状を |
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托鉢を続けながらライフワークとして象眼制作 に打ち込んでいる備後象眼第1人者、向島町川尻、 曹洞宗肥後国分寺徒弟、良寿庵主、今中興道さん (63)の念願だった製作工房が完成。軌を一にし て、これまた希求してやまなかった後継者が見つ かり喜びに包まれている。 備後象眼工房は自宅の庭に建設、木造平屋建て 8平方mの館で釈迦が降誕した今月8日に完成し た。それまでは自宅の一部屋を象眼作業場にあて ていた。 製作工房の完成より嬉しかったのは初代林又七 から人間国宝、田辺吉太郎、今中さんの師匠で熊 本県重要無形文化財、田辺恒雄と脈々と続き40 0年の歴史と伝統を誇る象眼の後継者が出てきた こと。 象眼の本場、熊本市から今中さんを慕い向島町 に移り住んで来たのは田尻正弘さん(45)で、12日、 仕事はじめとなる「たがね入れ」がおこなわれた。 金槌とたがねで初仕事となるネクタイピンに挑戦。 今中さんの懇切丁寧な指導のもと何十回、何百回 と鉄地にたがねを打ち込み、備後象眼独特の梨地 肌模様を施していた。 「真面目で集中力があり、彼なら根気のいる象 眼をやってくれると信じています。マンツーマン で全身全霊で教えていきたい」と今中さんは後継 者に絶大の信頼を置いている。田尻さんは「製作 現場の環境も良く時間に縛られることなく象眼に 没頭できます」と話していた。 2人は熊本の座禅の会で知り合い、田尻さんと 母、弘子さん(68)は今中さんの象眼に吻れ込み、 竜の花立てを購入した。熊本の伝統工芸、さおり 織の技術を身につけている弘子さんは、知的障害 者通所授産施設むかいしま作業所でさおり織りの 講師を務めマフラーやテープルクロスなど織機を 使い指導している。 仏門の世界では昨年10月、熊本の国分寺でおこ なわれた一番弟子となった高尾昇道の得度式の席 上で九州白雲会禅堂、高橋嘉道代表から悟りを開 いた禅僧に贈られる印可状が今中さんに手渡され た。名誉や欲望、お金といった俗世間から一線を 引き日々、座禅と托鉢に精進し悟りの境地を開い たことが評価された。 「工房も完成、象眼の後継者も見つかり、その うえ印可状までいただき二重三重の喜びです」 (今中さん)と心底から嬉しそうだった。 現在、鎌萬商事から依頼を受け創業者、故池田 源泉氏の肖像画の製作に取り組んでいる。鉄を取 り扱う会社で鉄地の板は会社が持ち込み、夫人が 詠んだ「すずつけた 杖つきて歩く姿の 可愛く もあり 淋しさも有る」の一句も添え源泉氏の似 顔絵をたがねで彫り純金で仕上げ、1周忌の7月 に引き渡す。 今中さんの夢と目標は「太閤秀吉は金箔で和室 を作ったが私はそれを上回る象眼で和室を作って みたい。400年の昔から今日まで象眼で和室を 作った人はいません」と志を高く掲げ、賛同者を 募っている。 [写真は象眼作りの手ほどきをする今中さん (左)と後継者の田尻さん]。 |