2005年7月28日(木)
 幼少期過した尾道舞台
  『桜の頃に』人の温もり描く
表紙 山野さん
 三次に生まれて尾道で幼少期を過ごした広島市
佐伯区、山野友和さん(30)が、尾道を舞台にし
た初の小説『桜の頃に』を文芸社(東京)から上梓
した(本体1000円)。
 恋人と別れ、毎日が失望のなか春の尾道を訪ね
た青年と、この町で出会った車椅子の少女との3
日間の淡くせつない、「約束」の物語。駅前から
海岸沿い、千光寺山の桜など、美しい風景と民宿
の「おばさん」の温もりが、尾道の町の象徴とし
て描かれている。
 山野さんは3歳から6歳まで、父親の仕事の関
係で栗原町に住み、尾道清心幼稚園に通った。高
校2年生の時、大林宣彦監督の尾道映画《ふたり》
に出会い、強い影響を受け、将来は自分も映像の
分野で仕事をしたいと願ったものの、思い切りが
付かず、これまで淡々と生きてきたという。しか
しその思いはどこかに抱いたままで、行き詰まっ
た時に、言葉で表現できる詩や小説を書いてみよ
うと取り組んだのが始まり。
 昨年春、尾道を訪れて千光寺公園の展望台から
眼下に広がる桜、雲の切れ間から虹を見た時に今
回の作品のイメージが浮かんだという。400字
詰め原稿用紙80枚に書き上げた。
 「作品からは、人の生きる糧や大切な時間など
を考えるきっかけになれば」と山野さん。広島市
内でのソーシャルワーカーの仕事を6月で退職、
「視野を広げて、もっと表現力や描写力を身につ
けたい」とこのたび上京を決意した。アルバイト
をしながらシナリオライターの養成学校に通うこ
とにしており、「映像を意識しながら作品を書い
ていきたい」と話している。

本のコード ISBN4-8355-9237-9



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