2005年5月8日(日)
駅前高層マンション
「なぜ尾道市に事前に打診しなかったか」
 亀田市長「驚きを越え憤りを」
  JR西日本岡山支社長へ公開質問状
建設予定地と予想図
↑完成予想図(右マンション合成)
(1日付け山陽余韻の続報)尾道市は先月末から
今月始めにかけて、JR西日本と信和不動産鰍ノ
対し、亀田市長名で駅前に計画進行中の高層マン
ション建設問題で、「質問書」と「要望書」を送
付している。連休明けの6日、市長室で亀田市長
は「全市民的な盛り上がり、協力を得ながらこれ
だけは絶対阻止しなければならない」と語り、自
らの政治生命を賭して解決に当たるという不退転
の決意を明らかにした。

 西日本旅客鉄道(株)の西川直輝・執行役員岡山
支社長に宛てた1日付の「質問書」は次の通り。

 新緑まぶしく、さまざまな花が咲き誇るゴール
デンウィーク、人々の心躍る季節ではございます
が、福知山線で起きた大惨事に対する社会の声も
厳しく、被災者への補償、復旧、安全対策など御
社の置かれている困難な状況については、理解を
しているつもりでございます。
 さて、去る4月12日に尾道駅の東に隣接する
御社所有地を不動産会社に売却され、当不動産会
社が12階建てのマンションを建設することが明ら
かになりました。このことに私は驚きを越え、憤
りを覚えております。
 私は、市長就任以来、歴史的な遺産と自然景観
が織り成す尾道の美しい都市景観を守り、未来へ
の財産として残すべく、「国際芸術文化都市」を
目指し、「世界遺産」登録への挑戦をテーマとし
た市政を推進してまいりました。こうしたまちづ
くり施策を通じて、観光都市尾道の知名度はいっ
そう高まり、観光客の増によって御社へも多大な
貢献をしているものと思っております。
 尾道の重要な景観構成要素である千光寺山南斜
面の景観は、明治・大正時代から長い年月をかけ
て形づくられたものです。市民や観光客の心を慰
め、懐かしさを感じさせるこの景観も、たった1
棟のマンションによって失われ、観光都市尾道に
決定的なダメージを与えてしまいます。
 このことへの配慮もなく、また尾道市で取得す
るかどうかの意向打診もなく、一不動産業者へ土
地を売却されたとすれば、尾道市の行政施策を否
定されたことになります。また、観光客の減少と
いうことになれば、御社にとってもみすみす収益
を減らすことになります。
 尾道市はこれまで、新幹線新尾道駅建設、山陽
線東尾道駅建設、市道久保長江線ガード改修など
に際して、御社の提示された金額の工事費等を負
担し、御社に対しては全面的に協力して参ったつ
もりです。その一方で、尾道市からの要望につい
ては、なかなかこれを実現していただいておりま
せん。
 つきましては、別紙記載の事項について、誠意
をもって回答くださるよう、質問をさせていただ
きます。
 質問事項
 1、線路との距離があまりなく、また前面に国
道2号線があるという制約の多い当該地にマンシ
ョンが建設されることを承知された上で売却され
たのか。
 2、これまで、鉄道隣接地の公共事業について
は、安全対策などでさまざまな条件を付されてき
たが、民間事業者がマンションを建設することに
ついては厳しい条件はないのか。
 3、駅周辺の公共トイレは、ウォーターフロン
トビル、しまなみ交流館、福屋にあるが、利用時
間の制限があったり、駅から遠いなど、高齢者な
どがたいへん不便を強いられ、尾道市に対して多
くの苦情が寄せられている。公共交通事業者とし
て、以前あったトイレをなぜ再設置できないのか。
 4、国道2号に平行して走る線路沿いのフェン
スが腐食して、台風などで倒壊する危険のあるも
のが見受けられる。事故が起きないうちに改修す
ることはできないのか。
 5、尼崎ではマンションに電車が飛び込む惨事
となり、マンション住民のほとんどが二度とマン
ションには帰りたくないと話されている。尾道駅
の場合も、ホームがあるとはいっても、高速で通
過する貨物列車などが、万が一脱線転覆というこ
とは全く想定されていないのか。
 6、不動産会社から土地購入の申し入れがあっ
た際、なぜ尾道市に取得の意向があるかどうか打
診されなかったのか。
 7、市民挙げて、マンション建設反対運動が起
ころうとしているが、岡山支社、本社それぞれ尾
道市の景観保全について配慮は一切しなかったの
か。
 8、購入した不動産会社に対し、建設工事施工
時にさまざまな制約(安全対策)があり、工事が困
難なことを申し入れて、計画変更や建設中止を求
めることはできないのか。
 以上、必ず文書でご回答をお願いします。

 尾道に決定的ダメージ
  諸準備を中止し協議の場を

 広島市西区横川町、(株)信和不動産の和田正男
代表取締役に宛てた市長名の要望書は次の通り。

拝啓
 御社ますますご隆盛のこととお喜び申し上げま
す。
 さて、先ごろJR尾道駅隣接地に御社がマンシ
ョンを建設されるとの情報を得ました。建設予定
地は、尾道駅前再開発事業施工期間中に市が借地
して臨時駐輪場として利用し、事業終了後もJR
に対し借地もしくは市での取得を要望していた土
地でございます。したがって、今回御社へ売却さ
れたことに驚きと戸惑いを覚えております。
 尾道の旧市街地は、八三〇余年前に公認の港と
なって以来、海運・商業等によって発展し、今日
のような歴史的な建造物と自然景観が見事に調和
した街が形成されてまいりました。
 海があり、山があり、文化財があり、先人たち
の生活の息吹が感じられる生活空間は、尾道市民
にとってかけがえのない財産であるばかりでなく、
年間200万人を越える観光客に安らぎと懐かし
さを感じさせ、旅情を豊かなものにしております。
もちろん私たち尾道市民も、この景観を誇りとし、
未来に残すべき宝であるという認識を持っており
ます。
 こうした市民の意識を支えに、私は、「国際芸
術文化都市づくり」と「世界遺産登録への挑戦」
を尾道市行政の柱としたまちづくりを推進してい
るところでございます。
 このような時期、仄聞するところでは12階建て
のマンションを予定されておられるようで、画像
合成によってシュミレーションしましたところ、
尾道駅に降り立って見る山手の景観が全く失われ
ることが判明いたしました。ヴェルディマンショ
ンの看板が設置されるや否や、多くの市民から建
設中止を求める声が私のところへ寄せられ、反対
運動も始まっております。
 尾道の今ある景観は数百年の歳月を経て形成さ
れたものでございますが、たった1棟のマンショ
ンでこの景観は破壊され、観光都市尾道に決定的
なダメージを与えてしまいます。
 このことをご賢察たまわり、建設予定地を尾道
市に売却していただきますよう切にお願い申し上
げます。当然のことではありますが、売却いただ
けることになれば、これまで御社が負担されてい
る経費などについては十分配慮をさせていただき
たいと思っております。
 また、マンション建設にかかる諸準備を一時中
止し、早い時期に私と協議の場を設けていただき
ますよう併せてお願い申し上げます。
 以上、どうぞよろしくお願いいたします。
                    敬具
 平成17年4月28日
  尾道市長亀田良一拝

転載責任者メモ:これだけ初っぱなから市民一体の建設反対運動が起きたら
        建設できないのでは。町じゅうに建設反対の旗が立ったら
        出来ても売れないでしょう。買った人も堂々と住めないで
        しょう。早期にスッキリ解決することが、業績を伸ばして
        いるこの建設会社のためにもなりそうです。尾道の地元業者
        ではないので、「事情を知らずに計画した」ということで
        撤退すれば拍手さえもらえるかも。今後いくらで尾道市に
        土地を売るかなどの交渉をみてからですが、それでも善意の
        第3者的な立場の民間企業だから、そんなに責められない。

        それに比べ、JR西がもしマンション建設を知った上で土地
        を売っていたとしたら、これは見識がないとしか言いようが
        ない。尾道を舞台に観光キャンペーンなどで稼いできて、
        今回の土地が観光地の玄関先だということを知らなかった
        わけがない。しかもカーブした線路ぎわに・・

        土地の高い東京駅のビル化でさえ、景観と文化遺産保全の
        ため、結局は4階建てレンガ駅舎の再建に落ち着いたのです。
        高層ビルにしたら確実にテナントが入るであろう場所なのに、
        それをしないことにしたJR東が東京で株を上げたことを
        JR西は参考にして欲しい。ビルを建てて儲けた方が
        株式会社として株主のためかも知れませんが、株主もまた
        株主である前に、景観や文化に誇りを持った日本の住民の
        はずです。


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