山陽日日新聞ロゴ 2004年2月29日(日)
復元「呼子丸」
 仕上げた職人の安堵感
  向島ドックで艤装して 夏に伯方島で進水式を
台に乗せられた模型
◎..(続報)かつて島廻りの定期航路で使われ、晩年
には大林宣彦監督の尾道映画《あした》に登場した旅
客船「だいふく」(映画中では「呼子丸」)の再建工
事が約2年の月日を掛けてほぽ終わり、27日夕方、
愛媛県伯方町から、この後艤装工事が行われる向島町
小歌島、向島ドック(杉原毅社長)に運び込まれた。
◎..木造船の建造技術と瀬戸内の船文化を後世に伝え
ようと、市民グループ「呼子丸1/8再建おのみち実
行委員会」(大谷治代表)が3年前から調査・研究を
重ねながら、市民からの募金活動を展開。1959年
当時、「だいふく」の建造に中心的に携わった愛媛県
伯方町の船大工、渡邊忠一さんに2002年春、制作
を依頼、全長3.5m、高さ2.3m、実際の6分の
1の大きさで再建を進めていたもの。
◎..スケールダウンはしているものの、模型ではなく
実際の船の建造工法をそのままに、日向杉を使って復
元。渡邊さん1人で部材の調達から加工、組立までこ
つこつ仕上げてきた。
◎..大三島橋の架かる鼻栗瀬戸を望める渡邊さんの作
業場から、実行委員の手で搬出され(=写真上)、2
トントラックに丁寧に載せられた。渡邊さんは「これ
まで何百隻と作っては納めてきたので、寂しさはあり
ませんが..」とは言いつつも、「でもこの船は特別で
すね、文化財として残すつもりで作ってきましたから。
当分気が抜けそうです」と1つの仕事をやり遂げた職
人の安堵感を滲ませていた。トラックに積み込まれた
後も、「どうもここが気になる」とカンナを取り出し
て調整するなど(=写真下)、トラックが見えなくな
るまで、手を振る姿が印象的だった。
◎..映画《あした》の撮影現場にもなった向島ドック
に到着すると、ベテランの技術職員らが駈け寄って来
て、「とても興味がありますから」と手作業の跡を見
学、その高い完成度に感心していた。
◎..キャビン内などの艤装を施して今夏、大林監督や
かつての船主ら関係者を招いて渡邊さんの作業場前で
進水式を挙げることにしている。
こちらの「活動報告」もどうぞ



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