山陽日日新聞ロゴ 2003年5月22日(木)
7月進水式か?
 船大工生きた『技』形に
  美しく丸みおびた「呼子丸」再建
船底部分の骨組みが見える

横から見たところ
 (続報)四半世紀ほど前まで、瀬戸内海の定期航路として
活躍、大林宣彦監督の尾道映画《あした》で使われた木造旅
客船「大福丸」(映画の中では「呼子丸」)の復元作業が、
愛媛県伯方町の造船作業場で順調に進んでいる。
 映画の撮影後に、尾道水道に浮かべられていたものの老朽
化から水没、廃棄処分された呼子丸を、木造船の文化と技術
を後世に残したいと、市民グループ「呼子丸1/8再建おの
みち実行委員会」(大谷治代表)が復元事業を計画。一昨年
秋から募金活動を展開しながら昨年夏、創建当時の建造者で
現役の船大工、渡辺忠一さんに再建を依頼したもので、現在
船体の基礎部分が組み上がるところまで来た(=写真)。
 船は全長3.3mで、実物の6分の1に縮小されてはいる
ものの、一つ一つの部位は全て実際の木造船の物と同じで、
当時の建造工法によって手作りで造られている。国産の檜と
杉材を使い、これまで既に3000本のネジを使っている。
丸みを帯びた美しい船体が徐々に形になってきた。
 「形だけ整ったら良いという模型ではなく、本物の船を造
っている。ここまで大変な作業になるとは思わなかったが−」
と渡辺さん。大谷代表は「かつて瀬戸内を走っていた木造船
の大工の技術を途絶えさせるのは、あまりに勿体なく、形に
して残すことには意義があるはず」と話している。
 呉市出身の俳優で、大林映画とも馴染みの深い美術系スタ
ッフ、栩野幸知さんはこのほど作業場を訪問。「渡辺さんに
職人の気質を感じました。本当の船を再建すれば大きくて置
き場所にも困るが、そのままをスケールダウンして技術を形
にして残しておけば、これを参考に将来、また本物の木造船
を造ることが出来ます」と語り、船に取り付けるスクリュー
など金具の装飾品の製作で協力したいと話している。
 7月20目の「海の目」を目途に進水式を行い、その後舗装
工事を続けて完成に向かうスケジュールだが、同委員会では
設置場所の選定、整備も含めた募金活動をこれまで以上に呼
びかけている。

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