山陽日日新聞ロゴ 2001年2月24日(土)
岡田菊惠さん
 映画やテレビ撮影で活躍し3代目

  藺草(いぐさ)で時代劇の笠40年
   伝統的工芸品功労褒賞で表彰を
い草の笠を持つ岡田さん
 伝統的工芸品産業振興協会(本部=東京)が主催する2000年度の
「店頭的工芸品産業小規模産地功労者褒賞」で、尾道市の岡田菊惠
さんが表彰されることになった。岡田さんは40年以上にわたって、
映画やテレビ時代劇、舞台演劇などで俳優が被る藺草(いぐさ)の
『笠』を制作、長年の功労が評価されたもの。
 伝統的工芸品を制作し、技術の発展に努めていながらも、産地規
模が小さいという理由で、国の指定を受けられない人(55歳以上)
を対象に、1975年度から同協会が毎年表彰しているもので、今年度
は全国で岡田さんを含む11人に贈られる、広島県い草業協会が県に
要請し、県内から1人が推薦された。
 岡田さんは備後奥さんの藺草を使って「虚無僧笠」(こむそうが
さ)や「浪人笠」、「流鏑馬笠」など昔の武士が被っていた笠を制
作、多くが時代劇の映画やテレビドラマの衣装小道具として現在も
登場している。菊惠さんの義祖父の浅七さんが百年以上前に始め、
義母の民子さん、3代目の菊惠さんへ受け継がれている。
 笠は、時代劇の撮影所がある京都の装飾問屋から注文が入り、そ
の都度大きさや形の違う笠づくりに取り組む。藺草以外の材料は、
秋に自分で切り出して来た真竹を糸のように細く割いた竹ひご、麻
ひもだけを使って編み込んでいく、1日に1つ作るのがやっと。藺
草や竹ひごには、ある程度の水分が必要で、冬でもストーブ無しの
自宅土間での作業となる。
 先代の横で見よう見まねで始めて、少しずつ技術を習得。「正座
でやらないと、なぜか形が整わないんです」と岡田さん。3年前に
先代が引退してからは、1人での作業となった。天気などその日の
状態で仕上がりが違ってくるといい、指先で微妙な変化を感じ取る。
「長年の経験だけです。材料の善し悪しや、適材適所も今ではすぐ
に分かります」と話す。
 現在時代劇で使われている笠は、ほとんどが岡田さんが作ったも
のと言われ、「テレビに映った時には、自分のものだとすぐに分か
ります」(岡田さん)。表彰式は来月2日、東京で開かれ、晴れの
舞台に出席する。

転載責任者メモ:これからは時代劇を見るたびにこの記事を思い出しそうですね。
        備後地方は藺草の中でもとりわけ質の良い物が採れ、城の天守閣の
        畳などにも使われていたそうです。

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