2012年9月19日(水) 尾道では初の試み 尾道商業会議所記念館企画展 引き札の美〜麗しき広告アートの世界〜 美術作品的広告チラシを愛でる |
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江戸時代に始まり、明治・大正期にかけて配布 された当時の広告チラシを、「引き札」(ひきふ だ)という。鶴亀、七福神、福助といった縁起物 から美人画と、そこに描き出されるものは現代の 我々が馴染む広告チラシとは大きく異なり、額縁 に収めればそれはまさに一幅の美術作品。アート な当時の広告チラシ「引き札」の、それも尾道関 係を集めた企画展が、本通りの尾道商業会議所記 念館1階企画展示室で開かれている。[林 良司] 尾道市商工課主催、尾道学研究会企画制作によ る【引き札の美〜麗しき広告アートの世界〜】と 銘打った企画展では、商都尾道を広告から偲ぶと 同時に、タイトル通り、美術的な見地からも楽し んでもらおうと、市内はもとより市外、県外から 十数点が出展される。 江戸時代に遡るものは一点、市教委所蔵の一枚 で、醤油・蝋燭・塩物類・かつおぶし・砂糖類を 商う万(よろず)屋【備後尾道東濱北江入 大根 屋喜八】のチラシで、彩色鮮やかな後の引き札と は異なる。東浜とは薬師堂浜。 尾道では初公開となる石川県加賀市・北前船の 里資料館収蔵の引き札は、【海陸物産委託問屋。 尾道港中漬 冨安佐助本店】、「錨製造處 尾道 鍛冶屋町 阪井善兵衛」など4点で、この内の冨 安佐助本店の引き札には、北前船と蒸気船で賑わ う住吉浜の情景が描かれている。 市内からは、【履物傘卸商 尾道市十四日本通 西原保兵衛】(因島椋浦町の民俗資料館蔵)、明 治37年、日露戦争時期の「住友銀行尾道支店」 (長江・日下廣氏蔵)などが見られ、とりわけ住 友銀行の一枚は図案が時代を映しており、加えて 印刷・発行年月日が記載されているのが貴重で、 かなり以前、天野安治・尾道学研究会会長の解説 で本紙でも大きく採り上げた経緯もある。 番外編では、山口玄洞翁が大阪で経営した山口 商店の引き札(明治後期・個人蔵)、お隣・鞆の 浦の商家が出した引き札コーナーもある。 展観に訪れた旅の男性は、「広告チラシとはと ても思えない。まさに美術作品の域ですね」と驚 いていた。 会期は11月25日(日)まで(当初告知では21日 までだったが延長)。10時〜18時、木曜休館。入 場無料。問い合わせは、尾道商業会議所記念館= 0848・20・0400。 【写真】=住友銀行尾道支店の引き札。「三郎 が艦鯛(艦隊をもじって)を釣る..」とあり、日 露戦勝に沸き立つ当時が窺われる。三郎とは恵比 寿神。右下端には落款もある。 |