山陽日日新聞社ロゴ 2012年9月9日(日)
野口久光展
ジャズの世界にも精通を−
 手描きポスターが映画語る
  シネマ・グラフィックス展開幕
「旅情」のポスターを前に根本さん
 「野口久光シネマ・グラフィックス展」が8日、
市立美術館で開幕した。
 街の中のもう一つの絵画−日本のアフィシストが
ヨーロッパ映画を描く−と題し、ポスター画家の野
口久光さん(1909〜94年)の遺業を紹介する内容。
東京都小平市、NPO法人古き良き文化を継承する
会の代表理事、根本隆一郎さんの企画協力で実現し
た。
 第2次世界大戦前から活躍し、東京芸術大学を卒
業後に東和映画で『にんじん』や『望郷』、戦後は
『第三の男』、『禁じられた遊び』、『大人は判っ
てくれない』、『旅情』などフランス映画を中心に
約1000作品のポスターを世に送り出した。
 そのうち手掛けた日本映画のポスターは、最晩年
にあたり大林宣彦監督の尾道映画『ふたり』と香川
県観音寺市を舞台にした『青春デンデケデケデケ』、
北海道小樽での『はるか、ノスタルジイ』の3作品
だけとあって、尾道にはゆかりが深いと言える。
 手描きの絵と独特な書き文字によるポスター、映
画俳優のポートレート、劇場用パンフレットの表紙
など約220点を紹介している。
 ジャズの世界にも精通していた野口さんは、昭和
20年代に演奏家やジャズレコードの録音内容などを
英語で書いたノートを残しており、多くのLPレコ
ードのジャケットも手掛けている。カウント・ベイ
シーやルイ・アームストロングとのツー・ショット
写真(70年)なども展示。
 「野口さんが残した映画ポスターに光を当てた恩
人の大林監督の古里で作品展が開催できるのは意義
深い」と企画協力した根本さん(=写真)。
 来館者は「今の映画ポスターと違って、ポスター
そのものが作品を語り、映画とそれに関わった人の
温かみが伝わってくる。当時観た映画のワンシーン
が、なぜか音楽に乗せて思い出される。手描きポス
ターの持つ力を感じる」と感想を述べている。
 初日は午後2時から、根本さんによる「知られざ
る野口久光の世界」と題してオープニング講演会が
開かれた。              [幾野伝]



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