山陽日日新聞社ロゴ 2012年4月25日(水)
三原在の山中仁さん
尾道大好き・写真好きが高じて夢の空間
 『坂道写真館』開館10年
  のんびり穏やかに 山手の小さな写真美術館
坂道写真館前の山中仁さん
 今から10年前の平成14(2002)年4月21日、東
土堂町の千光寺本参道中腹石段沿いの空き家に、
手書きによる【坂道写真館】の看板が掛かった。
館主は三原在のアマチュア写真家・山中仁さん
(54)。尾道好き・写真好きが高じて開設された
山手の小さな写真美術館には、以来多くの旅人が
訪れ、その中には繰り返し訪れるリピーター、そ
して観光案内犬として親しまれたドビンも居た。
10年目を迎えた坂道写真館を訪ね、山中さんに写
真館と尾道での日々を振り返ってもらった。
                [林 良司]
 山中さんが尾道に至ったのは大学時代。絵にな
る尾道は、また写真にとっても好適の場所。加え
て当時は角川映画による大林宣彦監督作品の全盛
期でもあり、足繁く尾道に通い、尾道の情景を写
し続けた。
 大学卒業後は看護師の道へ進み、病院での多忙
な毎日が、山中さんと写真に少し距離を置かせる
ことになった。そんな中、母親が倒れ、介護を要
することになったことから病院勤務を辞め、母親
の看病・介護に専念。
 その後、母親を見送った山中さんは、再び病院
へ復帰するか否かを決する際、写真の私設美術館
を尾道の山手に開いてみたいという、かねてより
の夢に踏み出す。
 早速に山手の空き家物件を探索。不動産屋から
初期段階にあった市の空き家バンクなどをあたる
も思うような物件は見つからない。しかし諦めき
れない山中さんはその後も粘り強く探し続け、そ
の思いの強さ・努力が報われ、千光寺本参道沿い、
尾道幼稚園前の2階建て古民家に辿り着いた。
 入居後は手作りで改装し、収集したオールド・
カメラ・コレクションの常設展示と、定期的な写
真展を開く、山中さん夢のミュージアムがここに
オープンした。
 当初は仕事復帰の事もあり、短期的な視野で見
ていたが(短期間でも一応夢は叶えたとして)、
観光案内犬としてメディアが騒ぎ出す以前のドビ
ンが写真館を訪れ、以来自身のお休み所と言わん
ぱかりに入りびたることになった為、止めるにや
めれなくなったという。
 閉館日に玄関先でじっと待ち続けるドビンの姿
も度々目撃されるなど、写真館はドビンにとっも
も無くてはならない存存だった。写真館にはあり
し日のドビンの写真や絵も飾られ、遠方からのド
ビンーファンの来尾も見られるという。
 展示室の隣に設けられた畳の部屋には、自身が
所属する尾道学研究会の図書を始め、尾道に関す
る本を多種並べ、ゆっくりくつろいで頂くお休み
所スペースになっており、「ゴロ寝をしたり、お
弁当を広げて頂いても結構ですよ」と山中さん。
 今後の写真館の運営については、「復帰した看
護師としての本業もある為、完全不定期での開館
になってしまいますが、のんびり緩やかなベース
で続けて行きたいと思います」と語る。
 のんびり緩やかに・・これこそ尾道らしい、尾
道に相応しい営みではなかろうか。
 開館は土・日が多いが、不定期ゆえに事前に問
い合わせを。開館時間は11時頃〜17時頃。入館料
は100円。現在は「尾道の猫街」展を開催中。
 坂道写真館=0848-24-1070。
【写真】=坂道写真館前で山中さん。




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