山陽日日新聞社ロゴ 2011年12月14日(水)
多門亭の修復工事
県建築センター協会からボランティア
 斜面地民家のモデルに
  割れた瓦はコンクリート材に
屋根に上がった工事メンバー
 広島県建築士会尾道支部(元廣清志支部長)が、
東土堂町の千光寺山南斜面に立ち、1970年代半ば
まで料亭だった「多門亭」の修復を進めている。
先週末には県建築センター協会登録の大工らがボ
ランティアで作業に参加した。   [幾野伝]

 千光寺新道の頂部、旧千光寺公園下に位置する
多門亭は1920年の建築で、木造総2階建ての切妻
瓦葺き、延べ床面積は366平方m。土堂町のT
さんが所有し40年ほど前までは料亭として使われ
てきたが、その後は空き家になっていた。
 Tさんが尾道市と県建築士会尾道支部に相談、
建築士の視点で斜面市街地の景観保護と空き家の
活用を目的に、歴史のある建造物の再生を手掛け
る地域貢献活動の一環で修復することになったも
の。
 急斜面地のため車輌や重機が入らず、資材搬入
や搬出は全て人力になることから、可能な限り柱
や梁、屋根瓦など古材を現場で再資源化し活用す
る。広島工業大学建築学科などに研究と実証実験
などで協力してもらっている。
 工期は3年で総予算は1000万円を予定。今年度
は「尾道市まちなみ形成事業補助金制度」で200
万円の市補助を受け、工事費280万円で傷みが
激しく雨漏りしている屋根の全面改修を先月初め
から行っている(=写真下)。
 一旦瓦を下ろし、下地から作り直しており、年
末までには工事を終える予定。
 ボランティア作業には、県建築センター協会登
録の大工、造園、水道工事に携わっている13人が
県内各地から参加。いずれも県建築職業訓練校の
卒業生で、同講師の門田文雄さん(63)の呼び掛
けに応えた。
 到着後、まずは屋根瓦を設置、固めるための土
を担いで千光寺の駐車場から現場まで下りた。建
物東側の瓦を取り外していき、その場で叩いてみ
てその反響音で再利用出来るかどうかを1枚づつ
チェック、選別していった(=写真上)。
 建築士会支部では来年度以降、減築しながら外
壁や内部を修理、耐震化も図っていく。
 割れて廃棄処分するべき瓦を現場で粉砕し、コ
ンクリート材の一部として再利用していく。広島
工業大学副学長、佐藤立美教授の協力でこのほど
基礎工事で実証実験を行い、強度的な課題もクリ
アしたという。
 元廣支部長は「廃材をゴミとして捨てるにも、
新しい材料を持って来るにも、全て人の手で運ば
なくてはいけないので、再利用すれば、それだけ
負担が軽減する。斜面地での民家の修理、再生の
モデル住宅になるのではないか」と話している。
 きれいに修復が終われば、将来的には人が集え
る施設になればと関係者は夢見ている。



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