山陽日日新聞社ロゴ 2011年11月25日(金)
神仏習合形態での祭典を執行
 正念寺鎮守白玉井成「御火焚祭」
  護摩木を焚き諸願成就を祈祷
火を焚く僧侶と参列者
 先月に住職交替の晋山式が挙行された西久保町、
時宗正念寺(荻野彰久住職)で23日(水)、同寺
鎮守・白玉井成(稲荷)祠の例祭「御火焚祭」
(おひたきさい)が執り行われ、新住職による初
の祭典執行を、参列の壇信徒が温かく見守った。
 同寺の鎮守神として境内一角に鎮まる白玉井成
は、イナリの字を通常の「稲荷」ではなく「井成」
と表記する。「稲生」と表記する例は久井の稲生
神社を始め所々にあるが、「井成」とするのは恐
らくここだけの特異な例であろう。その由縁は傍
らに湧きいずる「延命井」(延命水の井戸)に因
むものとの事で、「稲ナリ」でなく「井戸ナリ」
という解釈に基づき、井戸を鎮める水神的な性格
も帯びている様である。
 御火焚祭は、初春の初午祭(稲荷の縁日)、夏
の夏越祭に続く白玉井成の年中行事(祭典)で、
正念寺の数多い年中行事の締め括りとなるもの。
 祭典の前段は、備後国総社宮を抱える府中市の
小野(こや)神社より出張の神職による祝詞奏上
と、通常の神式儀礼によって進められ、神職退座
の後、僧侶による仏式儀礼へ移り、新住職である
荻野彰久(勢阿)師が般若心経を神前に捧げ、前
住職となった荻野義正(兼阿)師が太鼓を打ち鳴
らした。
 壇信徒より奉納された諸願成就の護摩木が一つ
一つ読み上げられ、神前で焚かれる火中へ投じら
れて行った(=写真)。
 一般的には真言、天台の密教系において見られ
る修法であるが、時宗(この場合は境内鎮守と寺
院本体の行事ではないが)の内に見られるという
のも珍しい事例と言えるのではないだろうか。
 御火焚祭が終わるといよいよ年の瀬、次は元日
の「若水汲み」で賑わう正念寺の年中行事。
                [林 良司]



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