山陽日日新聞社ロゴ 2011年6月21日(火)
中央街、用品店「富半」のマーク
 さらばじゃ!!『天狗面』
  大正から商都の栄枯盛衰を
建物壁面の巨大天狗
◎..高い鼻に大きな耳たぶ、凛々しい眉毛に金色
に光る見開いた眼―。大正時代から本通り商店街
の人の流れ、尾道の栄枯盛衰を見つめてきた「天
狗の面」が、姿を消すことになった。
◎..2m四方もある、赤く大きな天狗面は、中央
街の元洋品店「富半」(故山中富夫さん創業)の表
に掛かり、「面白いトレードマーク」として長年、
市民や観光客に親しまれてきた。
◎..建物の老朽化もあり、所有する神奈川県鎌倉
市、山中耕太郎さんと尾道市内の企業経営者(製
麺所)との間で先日、売買契約が成立し、近いう
ちに取り壊しが決まったもの。
◎..「なぜ洋品店に天狗面だったのか?」という
長年の疑問は、結局分からず仕舞いとなる。尾道
学研究会の林良司さんは「病気を退散させる『魔
除け』の意味から、薬屋が天狗のマークを使うこ
とは多くあったが、恐らく富半の場合も魔除けだ
ったのではないか」と話す。
◎..耕太郎さんのおじにあたり、同家で生まれ育
った山中善和さんも「子供の頃の私のあだ名は天
狗でした。でも天狗面の謂われを父親からも聞い
てなかった。今となっては想像でしかありません
が、商売を始めるにあたり、『成功しても天狗に
なるな』という自分への戒めだったのでは−」と
商都尾道の歴史と重ね合わせて分析している。
◎..天狗面は今後、契約先の主人によって丁寧に
取り外され、市街地にある同社家の菩提寺に寄進
される見込みだという。      【幾野伝】



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