山陽日日新聞社ロゴ 2011年6月1日(水)
『A Sense of Onomichi』
リンダ・オオハマ監督「叙情詩」
 アカデミー賞へ通じる
  短編映画祭コンペにノミネート
リンダ・オオハマさんと長尾さん
 祖母が大正時代、尾道から移住したカナダ人日
系三世の映画監督、リンダ・オオハマさんが、尾
道を舞台に2006年夏に撮影、翌年完成した[A 
Sense of Onomichi] (センス
オブオノミチ)が、米国アカデミー賞公認国際短
編映画祭の第13回「ショートショートフィルムフ
ェスティバル」のコンペティション部門「旅ショ
ート!プロジェクト」にノミネートされた。
                 [幾野伝]
 「ショートショートフィルムフェスティバル」
は、短編映画の魅力を日本にも紹介したいと
1999年に東京・原宿で誕生した映画祭。
 2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定さ
れ、グランプリ受賞作品は次年度、アカデミー賞
短編部門のノミネート候補作品になる。今年は過
去最多の4200本以上の作品が国内外から集まり、
コンペティションでは23の国と地域から厳選され
た68作品が上映される。
 リング監督の『センスオブオノミチ』は、赤い
傘を持つ「私」の視点で町を観察し、前半は雨降
りの静かな尾道を強調。寺や路地、商店、魚市場、
尾道水道、町並みなどをしっとりと表現。一転し
て後半は夜店や水祭り、住吉花火祭り、三体神輿
回しなど活気ある町の風景を切り取っている。20
分のドキュメンタリー作品。
 大谷治さんがプロデューサー、長尾光徳さんは
じめ佐野正美さん、堀川文雄さんがカメラマンと
して撮影に協力した(=写真の左がリングさん、
右が長尾さん)。
 ノミネートされた「旅ショート!プロジェクト」
は、観光庁とともに昨年から始まったコンペ部門
で、「旅っていいな」「旅がしたくなった」「日
本に行きたくなるね」をキーワードに、「日本の
旅」「日本の魅力」を描写する作品が対象。
 今年は全国から86作品が公募で集まり、「セン
スオブオノミチ」をはじめ、埼玉県熊谷市や北海
道小樽市、福岡県柳川市を舞台にした7作品が入
選、映画祭のコンペに挑む。外国人の作家はリン
グさんのみ。
 カナダ・バンクーバーに育ったリンダさんは、
尾道を舞台に祖母のルーツを辿ったドキュメンタ
リー映画『おばあちゃんのガーデン』を制作、20
02年に尾道を含む日本各地で自主上映した。以来、
支援者らの協力があり、1年の大半を尾道・千光
寺山の民家兼スタジオで過ごし、この町を拠点に
各地の大学での講義に出掛けたり、新しい作品の
構想から撮影、仕上げまでを行っている。
 活動がカナダと日本の文化の懸け橋と評価され、
3年前には日本での永住権も取得。昨年、バンク
ーバーの日系の若者でつくる太鼓奏団「チビ太鼓」
と尾道ベッチャー太鼓の国際交流を記録した「礎
Fusion  of  the Hearts!
を1年掛かりで仕上げ、しまなみ交流館で「セン
スオブオノミチ」と共に上映会を開いた。
 今回は映画祭に合わせて来日し、東北大震災の
被災地を巡ってから映画祭に向かう予定。グラン
プリ発表は今月26日。
 リングさんの活動を支援じている大谷さんは
「肩肘を張らず、普段の尾道の暮らしが叙情詩的
に描かれている。日系三世のカナダ人が感じる尾
道にはこんな姿もあるのかと改めて教えてくれる
作品」と映画祭でのノミネートを喜び、作品の更
なる「成長」に期待を寄せている。



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