山陽日日新聞社ロゴ 2011年3月24日(木)
東京の現況は
 東京在の愛読者より近況報告メールが
  どう伝わっているのか?
   猛烈に節電も、特に不自由はなし
 大の尾道ファンであり本紙ではお馴染みの小野
文人(東京・新宿区在)さんから、メールでお便
りを頂戴した。直接的な地震の被災地ではないも
のの、計画停電に原発被害など大きな影響を受け
る首都圏の現況を伝えるレポートとして、非常に
興味深いので、お便りの一部を抜粋して紹介した
い。            [編集・秋田完]

 私の住んでいる東京でも毎日余震が続いていま
す。勿論、震源地の近くと比べたら小さいので話
題にも上りませんが、しばらく静かだと思ってい
ると少し大きめのが来て、棚に戻した小物がまた
落ちてきたり。逆に言えばその程度なので報道し
てもらう気もないわけですが。
 そんな中での「買いだめ」報道。これをオイル
ショックの時と並べて言う人がいますが、オイル
ショック時のは単なる流言飛語が元。今回は余震
が続き、原発が不安定で、しかも実際に停電もあ
るという中で、個々の判断で買っている。
 ガソリンも、実際に生産が落ちて足りなくなっ
ていているから並んで買っている。これを、単な
る流言飛語に踊らされて買っていた人と同じに語
るのは間違い。
 実例をいくつか。
 普段は夕食に家族でカップ麺など食べない人が、
停電で炊飯器が使えない、また節電に協力しよう
とカップ麺を主食にすれば、スーパーから消える
のは当然のこと。これを「買いだめ」と言うでし
ょうか。スーパーを視察に行った大臣がいました
が、スーパーに物が無いのは見に行かなくてもテ
レビを見れば分かること。なぜ無いのかは各家庭
を視察に行かないと分かりません。
 普段は「残りが1つになってから買いに行く」
トイレットペーパーを、「残りが2つになったか
ら念のために買っておく」だけで、初回の回転率
が上がる。特定の悪人が10袋買っても大した影響
はなく、大勢の人が少し早めに買っておく、1つ
多めに買っておくという積み重ねが大きい。全て
の物資について同じ。
 普段はその日の分だけ買うのを翌日分まで買っ
たりする。主婦が家族のためを思うのは当然の心
理。どうも報道では、一部のエゴの固まりの人が
物不足を招いていると、物事を単純化してして見
せているような気がしてなりません。
 お米を2袋かかえて歩いている人が、いかにも
「買いだめに走る悪い人」みたいに映像で流され
たりする。なぜ2袋なのか、取材してから流して
欲しい。近所のお年寄りに頼まれて運んでいるの
かもしれない。保育や介護の施設で待っている人
のために探し歩いてやっと見つけたのかもしれな
い。
 報道に決めつけ、思い込みが多すぎます。「こ
んな映像が欲しいよね」という所にたまたま通り
かかった人が悪い人の代表にされてしまう。報道
する人は、まず自分の奥さんを取材して欲しい。
記者は本当の市民生活が分かっていない気がしま
す。
 現在は流通が悪く、普通の人が普通に買ってい
るだけで物が無くなっていきます。「買いだめを
やめて」ではなく「買い控えて」と言わないとい
けないのです。
 物が急になくなるもう1つの原因が平常時の在
庫の無さ。メーカーをはじめ無駄な在庫を1つで
も減らしてギリギリに回していくのが経営的に合
理的ということで、根本的に異変に弱い体質にな
っています。それは「民間では当たり前のこと」
とされ、「無駄になる予備は国や自治体が税金を
使って保管しておけばよい」という考え方。しか
し自治体も金が無く「ぎりぎり死なない程度」の
食料備蓄も持っているかどうかの状態。
 平常時から言われていることですが、結局は個
人の備えが大事ということです。戦中戦後を経験
された方にとっては「当たり前じゃ」という話で
すね。
【編集部より】
◎..「御社のホームページを見て電話しているの
ですが..」このような問い合わせを、結構頻繁に
受ける。
◎..愛読者の方はご存知の通り、弊社にホームペ
ージなるものは存在しない。本紙の情報をメイン
に尾道の様子を余りに懇切丁寧にまとめてあるた
め、小野さんのホームページ「旅と散歩の部屋」
を本紙のホームページと勘違いをしての出来事。
◎..実のところ、そろそろこの件で、小野さんの
見解が聞けるのではないかと、心待ちにしていた
節もあった。
◎..メールの内容が報道などで知る首都圏の様子
と違う印象も受けたことから、連休明けの火曜日
の午後、尾道市東京事務所にも近況を伺いに電話
してみた。
◎..いつもお世話になっている女性所員に、それ
となく様子を尋ねてみろと「停電にも大分慣れて
きましたし、スーパーでの買いだめも一段落、通
勤もスムーズですよ」とのこと。
◎..お二人に共通していたのは、被災地のことを
思えばこれくらいのことを我慢するのは当たり前
で、周囲も大抵文句を言わずに我慢しているとい
う話。
◎..またお二人とも店に集まって食べた方が節電
になるとのことで外食を勧められている件は、新
鮮で興味深かった。
◎..女性所員曰く「家族みんなで一時に集まって
食事をするようになって、とても良くなった」と
か。災い転じてなんとかではないが、思わぬこと
で家族団欒の機会も増えたよう。
◎..ガソリンや灯油泥棒出現のニュースも一部に
はあるが、この程度は平時でもあること。未曾有
の大災害に見舞われた日本人の凛とした姿勢が、
国連はじめ海外でも評価されている旨の報道も。
まだまだこの国も捨てたもんじゃないということ
か...。



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