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2011年2月22日(火) 尾道鉄道各駅停車回想記・・・最終回 本日も延着 『御調文学』より 虹野 かな太 |
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三美園駅を出るといよいよ旧尾道市内に続く平 坦地を走ることになる。坂を下っていくと大池駅 に到着。尾道方向に向かって右側に大きなため池 が見える。栗原地域の灌漑用と思われるが、仙人 峠の南面を利用した見事な池に先人の知恵と苦労 が偲ばれる。この駅は私が通学していた時代には 駅名が大池と呼ばれていたが、その後東側の丘陵 地に尾道高校が開校したので、尾高下駅と改称さ れたようです。 大池駅を下っていくと栗原駅に着く。ここから さらに乗客は増えて、今時の若者言葉で言う「チ ョー満員」でも表現できないほどの人が乗ってい た。二、三本後の九時過ぎの電車に乗ったら、空 気を運んでいると言われるくらいガラ空きとなる のが嘘のようだ。栗原駅を発車した電車は直ぐに 宮ノ前駅に到着する。右側に栗原小学校の校庭が 見えて、その先に駅名に由来する八幡神社の森が ある。 この辺りから町並みは途切れることなく続いて 程なく青山病院前駅となり、電車を降りる客も出 始める。 次の駅は地方事務所裏駅となる。ここの駅を降 りると左側に広島県庁の出先機関である御調地方 事務所がある。旧御調郡は尾道市、三原市から因 島、向島の島嶼部、中山間部の御調町近辺の村を 含む県内有数の面積、人口を擁していたので、相 当賑やかな人の出入りがあったようだ。 地方事務所裏駅を発車すると線路の両脇にノコ ギリ型の屋根が続く工場の間をすり抜けるように 進む。ここは東洋繊維株式会社尾道工場である。 現在のスーパーマーケット・サティ辺りの一帯が 工場跡になる。工場を抜けると西尾道駅へ到着。 直ぐ目の前に国鉄尾道駅が見える。 順調に到着すれば、終点の尾道駅には下りの汽 車が来る五分くらい前に乗り換えホームに行ける ので、ゆっくりと電車を降りて尾道鉄道のホーム から地下道を通り、国鉄尾道駅の下り線一番ホー ムに行くことが出来る。ところが電車が西尾道駅 を出て大きく左にカーブする頃、目の前に松永方 面から尾道駅に滑り込む汽車が見える。 終点尾道駅に着くやいなや、下り列車に乗り換 える学生は一目散に地下道に駆け下りて汽車に乗 り込む。それでは間に合いそうにないときはホー ムから線路に飛び降りて発車の汽笛が鳴っている 列車の反対側から乗ることも何度か有った。尾道 鉄道の駅員が大声で制止するが、間に合うと思え ば乗っていた。いまではとても考えられない光景 だった。そのような光景の出現しない日も年間何 度か有る。今日がその日だ。電車は尾道駅に到着 したが下りの汽車はすでに発車して目の前をゆっ くりと三原方向に進んでいる。あきらめた学生は 駅事務室に向かう。ここで延着証明書を書いて貰 い、学校に提出する。 全員が次の汽車に乗って学校に行くが、三原駅 から学校まで他に通学生のいない道をぞろぞろ歩 くので周辺の大人の目が気になる。尾鉄組全員遅 刻。学校では教務主任から「一番電車で来い」と 嫌みを言われるが、素知らぬ顔で教室に向かって 走った。この事が三年生になって木頃本郷駅でバ スに乗り換えるようになった、もう一つの理由だ った。 尾道鉄道、本日も延着!。懐かしい昔話である。 |