2010年10月2日(土)
森岡久元さん
 頼山陽の「叫び」現代に
  尾道物語・姉妹編
  小説『十八歳の旅日記』上梓
表紙
森岡久元さん
 幼少期から青年期を尾道で育った作家、森岡久
元さん(東京都)が新しい小説集『十八歳の旅日
記』を澪標(大阪市)から上梓した。これまで刊
行した「尾道物語」の姉妹編で、自身10冊目の小
説となる。            [幾野伝]
 自分に悩む男子高校生が少し不思議な体験から
自信を持とうとする青春物語「ストローハットの
夏」、都会で姉と弟のこれまた不思議な冒険スト
ーリー「ペリット」、表題作の「十八歳の旅日記」
の3篇を収める。
 「十八歳の旅日記」は、尾道にもゆかりの儒学
者で詩人の頼山陽(頼久太郎)が書き残している
絵日記「東遊漫録」をめぐる物語。同じ探求心で
集う男女が、18歳の時に初めて広島から竹原、糸
崎、尾道、神辺などを通って江戸まで旅した山陽
の心情を手繰り寄せながら、そこに秘められた青
春の葛藤や真実に迫り、現代社会を焙り出そうと
試みた労作。
 1940年生まれの森岡さんは、母親の古里尾
道に4歳の時から暮らし、久保と土堂小学校、長
江中、尾道商業高校に学んだ。在学当時、活発だ
った文芸部の同人誌に小説を書いたのが始まり。
関西学院大学に進学し、同人誌「姫路文学」に参
画、本格的に創作をスタートさせたが、卒業と同
時に就職、その後会社を興して経営者になったこ
とから、長年筆を休んでいた。
 15年ほど前に休刊していた「姫路文学」が復
刊されたことを切っ掛けに書くことへの情熱が再
び湧き上がり、コンピュータ関連部品の販売会社
のトップを務めながら同人誌などへの執筆を続け
ている。今回収載した3篇も同人誌「別冊關學文
藝」に初出誌した作品。
 尾道での少年から青年期の体験、思い出をもと
に描いた『尾道渡船場かいわい』が2000年の
第7回神戸ナビール文学賞を受賞、その後も『ビ
リヤードわくわく亭』『尾道物語・純情篇』『サ
ンカンペンの壷』『尾道物語・幻想篇』『恋ヶ窪』
と毎年1、2冊ずつコンスタントに世に送り出し
ている。
 後書きで「現代の少年たちと同様に、二百年前
の頼山陽が苦しんだ、心の闇からの叫びが秘めら
れているのではないかと。その隠された真実を推
理しつつ、わたしの故郷である尾道をめぐる、現
代の物語として書きました」と森岡さん。電話で
の取材には、「会社の仕事からも離れ、やっと自
分の時間が持てるようになったので、これからも
っと精力的に書いていきたい」と話していた。
 定価本体は1600円、啓文社各店にも平積みされ
ている。



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