2010年2月23日(火)
森崎監督特集
 撮影秘話で映画人生辿る
  シネマ尾道で女優の倍賞美津子さん招き
森崎東監督
 夫人が尾道出身の映画監督、森崎東さん(82)
の特集上映が、20日からシネマ尾道で始まり、初
日は監督と女優の倍賞美津子さん、2日目には平
谷祐宏市長夫妻も観客で参加するなか、映画評論
家の山根貞男さんとの対談が開かれた。[幾野伝]

 「森崎監督の上映会に敬意を表したい」と、尾
道出身の大林宣彦監督から贈られた生花が映画館
の玄関口に飾られるなか、初日は森崎監督と女優
の倍賞美津子さんを招いての対談があった。立ち
見客も出る盛況ぶりで、コーディネーターはシネ
マ尾道の河本清順支配人がつとめ、監督と共に聞
き役に徹した。
 倍賞さんは現在、NHK大河ドラマ「龍馬伝」
に出演中で、監督の要請に応えてその撮影の合間
に半日だけ初めて尾道を訪れたもので、今回上映
している森崎監督の第一回作品『喜劇女は度胸』
(1969年)で主演デビュー。
 40余年に亘る監督との付き合いの中で、「『黒
木太郎の愛と冒険』の撮影の時には、アントン
(アントニオ猪木)と結婚する前の恋愛中で、デ
ートの約束をしているのに、監督が粘りに粘って
撮るのでよくイライラしていました」と笑いなが
ら振り返り、「その後、離婚した時など節目節目
に、不思議と森崎監督と仕事をした。撮影中に資
金が底をついて、現場で新聞紙に包まれたおにぎ
りを食べたことも良い思い出です。私の俳優人生
の中で、こういう先輩が居て下さることが幸せで
す」と語った。
 また尾道の印象については、「映画を愛する、
こういう若い女性が頑張り、それを町の人達が
支えている尾道という町は素晴らしい」と映画館
の復活と活動を称賛した。
 会場からは尾道大学の女子学生が「普段はテレ
ビしか見ていませんが、今日は日本の娯楽映画も
良いものだと感じました。これをきっかけに映画
を見ていきたい」と感想を述べていた。
 最後に監督は「昔の映画は、(今のような)こ
んなんじやなかったんです。みんなに愛されてい
た。これからも、この映画館で良い映画に出合っ
て下さい」と呼び掛けた。

人間感情の根源は怒り
話中に現実の生きた題材が
 2日目は、平谷市長夫妻も観客で参加するなか、
映画評論家の山根貞男さんと監督の対談があり、
監督が思いの丈を述べた。
 「敗戦の翌日、実兄が割腹自殺し、『お前はど
う生きるんだ』と突きつけられたのが全ての始ま
り。私は笑いとか涙とか、人間の感情の根源は
『怒り』だと思っており、そこが会社(松竹)と
の考え方に違いがあったと思います」と、フリー
になり、自らの作品を『怒劇』と称する所以に触
れた。
 また、「しかし独立系で撮った作品も、松竹の
依頼で撮った作品も、入れ込んだ思いは同じで、
両者に変わりはないです」と付け加えた。
 山根さんは「森崎作品は、もちろんフィクショ
ンではあるがドキュメンタリーでもある。ストー
リーの中に生きた題材があるから。空想のフィク
ションではなく、現実から発した妄想であるとこ
ろがユニークである」と語った。
 3月5日(金)までの毎日、新作の『ニワトリ
はハダシだ』、『喜劇女は度胸』、『生きてるう
ちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』のうち
から1、2本づつ上映されている。スケジュール
など問い合わせはシネマ尾道(TEL 0848-24-8222)
へ。

詳しくは公式ページで



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