2008年10月21日(火)
森岡久元さん
 尾道物語の三部作完結
  故郷舞台「幻想篇」で少年の心を
表紙森岡さん
 幼児期から高校卒業まで、尾道で育った作家で
会社社長の森岡久元さんが新しい小説集『尾道物
語幻想篇』を澪標社(大阪市)から発刊した。古
里を舞台にした尾道シリーズの3作目となる。
                  [幾野伝]

 『尾道渡船場かいわい』と『尾道物語・純情篇』
につづく尾道三部作の完結編で、自身にとっては
8冊目の刊行となった。
 「奥の池のギンヤンマ」▽「横綱が飛んだ、あ
の九月」▽「まもるのアーチ」▽「先生の悔やみ
状」▽「片隅の季節」の5篇で構成。
 前半3編は40〜50年ほど前の尾道が舞台で少年
の繊細な心の揺れを映し出す。「先生の悔やみ状」
はさらに森岡さんの自伝的小説の香りが漂ってく
る。
 「まもるのアーチ」では、尾道の山の中腹の古
い木造アパートで暮らす少年の性への目覚めがテ
ーマになっていて、尾道を知る者にとっては風景
とともに、よりその情景にリアリティさが増して
くる感じ。
 森岡さんは母親の里である尾道で4歳から生活
し、小学校は4年生まで久保、その後土堂、長江
中、尾道商業高校に学んだ。当時活動が活発だっ
た文芸部で同人誌に小説を書いたのが始まりとい
う。
 関西学院大学に進学し、在学中に同人誌『姫路
文学』に参画、本格的に創作に取り掛かったが卒
業後は就職、その後会社を興して経営者になり忙
しさから長年、筆を休んでいた。13年ほど前に活
動を休止していた『姫路文学』が復刊されたこと
をきっかけに、書くことへの情熱が再び沸き上が
ってきた。
 東京都中央区にあるコンピュータ関連部品の販
売会社を経営するかたわら、同人誌などへの執筆
を続けている。『尾道渡船場かいわい』が2000年
の第7回神戸ナビール文学賞を受賞した。今回の
作品も、書き下ろしの「先生の悔やみ状」以外は
『別冊關學文藝』と『姫路文学』で初出誌したも
の。
 あとがきで森岡さんは「はるかかなたを、遠い
まなざしで眺めるころになると、もはや、どんな
物語も『幻想篇』に収めて、おかしくないような
気がしてまいります」と結んでいる。

ISBN978-4-86078-130-9
\1600+税



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