![]() |
2008年7月10日(木) 芸予観光フェリー 尾道市の第3セクターの検証 生活航路存続に正念場 フェリー廃止に 因島〜今治の快速船 |
|
![]() |
||
因島から今治を結ぶ第3セクター、芸予観光フ ェリー株式会社(赤尾宣宏社長)が航路存続の危 機に見舞われ、今年5月末でフェリーを廃止、人 を運ぶ快速船だけ就航している。しまなみ海道の 全線開通で車も人も激減、燃料の高騰が追い打ち をかけ、昨年は6000万円の赤字で経営は立ちゆか なくなっている。航路を存続していけるかどうか、 先行きは不透明である。 芸予観光フェリー株式会社は本四架橋、伯方大 島大橋が開通する前年、昭和62年7月、愛媛汽船、 因島汽船、今治市、上島町、因島市が3000万円を 出資し設立した。筆頭株主は愛媛汽船で40・7% を所有、今治市と上島と因島市の3自治体が33.5 %、うち旧因島市が6%の株を持ち尾道市に引き 継がれている。 昭和63年1月、伯方大島大橋が開通すると当時 に因島〜生名島〜弓削〜佐島〜岩城島〜伯方島〜 大島〜今治を結ぶ生活航路、産業経済航路として フェリー7往復、快速船9往復を走らせた。 開業当初は業績が上向き、3年後平成2年には 旅客が33万人、車が8万8000台とピークに達した。 以後、順調に推移し黒字の経営が続き累積剰余金 を積み重ねてきたが平成11年、来島3橋などしま なみ海道が全線開通すると利用客が落ち込み、特 にフェリーの車は1万8000台とピーク時の2割に 激減した。一昨年5月から、フェリーは伯方島で 折り返し今治行きは廃止し航路を縮小した。 利用客の減少に歯止めがかからず昨年1年間は 旅客23万1000人、車両が1万3000台と採算ライン を大きく割った。昨年の決算は運賃収入2億4192 万円や保険収入など合わせ収益が2億4439万円に 対し船員など社員58人嘱託48人の人件費、燃料代 など費用3億0352万円を差し引き5913万円と 6000万円近い赤字となった。 開業当初上げた利益剰余積み立て金で赤字を補 填してきたが昨年の損失を穴埋めして残り840 0万円となり、経営危機は一段と増し、今年5月 末で採算の悪いフェリー航路を廃止した。また2 月からは運賃を値上げした。 追い打ちをかけたのが燃料の軽油の値上がりで 快速船の年間燃料費は約9000万円、昨年1リット ルあたり80円だったのが110円の高騰、1000万 円以上の出費が嵩む。加えて外国製のエンジンを 搭載している快速船=写真=の4年に1回の検査 に2000万円の費用がかかり、航路維持に赤信号が 灯っている。 土生〜今治の快速船航路は国立弓削商船、弓削 高校、伯方高校と通学、今治や因島への通勤、お 年寄りの病院通いや買い物客など交通手段を持た ない島嶼部の住民の足として今でも23万人が利用 され、生活航路として欠かせないものになってい る。 「今後、収支の改善は難しく船員を減らし人件 費の削減、役員報酬の減額、便数を減らすなど合 理化に努めていきたい。それでも追いつかなけれ ぱ県、自治体の行政支援を仰いでいくことも考え ています」と航路存続に向け、一層の合理化をは かり難局を乗り切っていきたいというがこれとい った切り札はない。 海とともに栄えてきた旅客フェリー航路は本四 架橋で一変、経営的に追いつめられている。橋と 船との共存共栄の道はあるのか模索が続けられて いる。 |