2008年2月8日(金)
活動本格化
 「尾道空き家再生プロジェクト」
 斜面地区「空洞化に歯止めを」
  建築塾で職人育成や技術伝承も
会合の様子
 「尾道の顔」とも言える斜面地の古い空き家を
一つでも減らしたいーと活動している市民グルー
プ「尾道空き家再生プロジェクト」(豊田雅子代
表)がNPO法人を設立し、本格的に活動してい
くことになった。「空き家を再生し再活用するこ
とで、斜面地区のコミュニティを守りたい」と話
し、「出来ることから取り掛かり、将来的には市
の空き家バンク制度を請負わせてもらえるような
団体になりたい」と意気込んでいる。 [幾野伝]

 空き家再生プロジェクトは2007年5月、「尾道
の空き家、再生します。」という個人プログ(日
記風ホームページ)を立ち上げたのが始まり。元
ツアーコンダクターだった豊田さんは100回以
上渡航し、特に欧州の何百年と変わらない町並み
に感銘を受けたことがベースになって、「古里尾
道の町を構成してきた古い家屋をこれ以上壊さず、
中心部の空洞化に歯止めを掛けたい」と活動に着
手したもの。
 そんななか三軒家町の斜面に建ち、大林宣彦監
督の映画《さぴしんぽう》や《ふたり》に登場し
た通称「和製ガウディ」の異名をもつ古民家が危
機的状況にあることを知り、買い取って活動の拠
点にした。1933(昭和8)年建造のこの家も25年
間空き家になっていたことから傷みが激しかった
ものの、ボランティアが協力して片付けや大掃除
を行い、夫訓嘉さんが中心になって再生工事に取
り掛かっている。
 さらに7月にはプロジェクトを立ち上げ、チャ
リティ・イベントを開催、山手の空き家を使った
アート展「アーティスト・イン・レジデンス尾道」
で尾道出身の造形作家、山本基さんによる個展
「塩の迷宮」の会場となり、1ヶ月で1000人が訪
れるなど話題を呼んだ。秋以降は講師を招いて月
1回のペースで集会「空き家談議」を開いて一般
に開放している。
 先月末までにNPO法人設立の申請を県に行い、
その前に開いた設立発起人会では豊田さんが活動
の目的や今後の展開などについて説明した(=写
真)。
 「空き家の再生や空き家バンクの活性化事業な
どを通して、古い町並みや景観の保全、移住者と
定住者の交流促進で町の活性化、そして新たな文
化、ネットワーク、コミュニティの構築を図りた
い」とあいさつ。さらに「現在失われつつある職
人の技術や景観に合ったこれからの家作りについ
て考え、今後の町づくりに反映させて、将来の子
供達も誇りに思える尾道づくりをしていきたい」
と決意を述べた。
 代表理事には豊田さん、他に尾道大准教授や市
内外の会社経営者、一級建築士、不動産業者ら9
人の理事を選んだ。
 今後は市行政や町内会長、寺院などに協力を仰
ぎながら、空き家の詳しい調査を始め、情報の収
集とインターネットでの発信に力を入れていく。
さらに月1回の空き家談議をはじめ、職人育成の
目的で建築士や現役の職人を講師に招く尾道建築
塾(仮称)、再生工事の実技体験、建築探訪・町
歩きなどのイベントも開いていく予定。
 豊田さんは「尾道の旧市街地は、尾道の顔であ
ることは間違いないのではないか。これを市民の
みんなで、みんなのものとして大切にしていきた
い。活動の基礎を築いて、市の空き家バンク制度
を受託させてもらえるような団体になりたい。関
心を持ってもらい、もともと住んでいる人と新し
く住み始める人とのコミュニケーションを図り、
『山手の協働』とでも言うのか、昔あった隣同士、
人の繋がりが当たり前のようになるのが目標です」
と語っている。

行政の支援が可能か?
 空き家談議で東工大の原口紘一さん

 設立発起人会を前に開かれた第4回「空き家談
議」では、数年前の「とりのマーク劇団」の公演
から尾道と繋がりがある東京工業大学、真野洋介
研究室の原口紘一さん(社会工学専攻)が講演し
た。
 西土堂町、東土堂町、長江1T目を中心に斜面
地の空き家の状況などを調べた原口さんは、人口
の変化や車中心の現代社会には合わない住環境の
不利性などを解説。
 その結果「住む人が減り空き家が増えているが、
一方で新規に移住、出店してくる動きも近年見ら
れ、土堂小学校による影響かも知れないが」と前
置きして、「1999年〜2007年までに西土堂町で25
世帯、東土堂町で27世帯の入居が起こっている」
と述べた。
 さらに「新規の入居者にどっては水回りの修繕
が重要である」と分析、空き家に人が入るために
は、「今後行政が斜面地のインフラ整備をどのよ
うにするのか、『共同浄化槽』などの支援が可能
なのかどうかが、問われている」と結んだ。

ブログ「尾道の空き家、再生します。」は>こちら



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