2007年8月28日(火)
吉池宏さん
 全国と尾道の石塔訪ね
  写真集『音の聞こえない時間』を
本

作品と作者
 これまでの研究成果を渾身の一冊にー。元尾道
北高校教諭の吉池宏さん(70)が尾道をはじめ全
国の有名な石塔類について写真と文章で綴った
『音の聞こえない時間』を上梓した。丹念に歩き
調査した著者の石造への愛情が満ちている。
                 [幾野伝]

 初めての刊行物となった『音の聞こえない時間』
の副題は「古代から近世までの石塔ロマンー尾道・
全国篇」。
 古池さんは三軒家町に生まれ育ち土堂小、長江
中から尾道北高校、広島大学教育学部に学んだ。
保健体育の教諭として大崎高校を振り出しに、初
期の尾道工業高校(1964〜75年)、続いて尾道
北高校(〜1989年)、三原高校で教鞭を執り自彊
高校の教頭で定年退職した。
 尾工時代にはサッカー部顧問として高校新人戦
10連覇を飾り、日本サッカー協会公認審判員を42
年間、現在も尾道サッカー協会顧問を務めるなど
「体育会系」を自任しながらも一方で、教諭時代
から石造美術に興味を持ち、尾道男声合唱団コー
ルクレイン、尾道カルチャークラブに所属するな
ど古里尾道の文化的活動にも積極的に関わってい
る。
 墓地の整理や無住寺の増加、道路工事などによ
って石塔類が減少、消息不明の状況が進むなか、
「学者や専門家ではなく、素人の視点で楽しく石
造美術に目を向けるガイドブックがあってもよい
のではないか。特に名刹が多い尾道は、石造物の
研究図書がほとんど無い」と自らの取材と編集を
計画。
 2005年2月から今年6月まで、北は岩手県から
南は鹿児島県まで23府県の910ケ所を訪ね歩い
た。尾道市内の寺院129力寺についても詳しく
調査、五輪塔や宝塔、宝篋(ほうきょう)印塔、
層塔など合わせて3941基があることなどを突き止
めた。
 日本の層塔の源流とされる滋賀県東近江市、石
塔寺の国重要文化財の三重塔「阿育王塔」(8・
2m)=写真=をはじめ、宝塔・多宝塔、宝篋印
塔、五輪塔、無縫塔、板碑、庚申塔などに分けて
名基、特色ある石造物292基を写真におさめ、
高さや年代、材質などのデータを加えて解説して
いる。
 尾道市の石塔については、新市域も含めて寺院
別に全てを網羅した。スポーツプログラマーらし
く、「自然満喫 石造美ウォーク」として寺院を
巡るウォーキングの18のモデルコース(所用時間
1時間半〜6時間)も紹介している。
 「スポーツの『動』に対して石塔の『静』を意
識して、『音の聞こえない時間』というタイトル
にした」と吉池さん。「県内では、原爆と空襲に
遭った広島市と福山市、呉市の石塔が極端に少な
い。平和の大切さを噛み締めながら、次は尾道を
除く石塔の県内版をまとめてみたい」と抱負を語
っている。
 啓文社全店で1500円で販売している。



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