2007年6月9日(土)
文学記念室で
 恩師への書簡を初公開
  林芙美子昭和6年尾道講演会めぐって
展示の様子
原稿用紙に書かれた書簡
 尾道ゆかりの作家、林芙美子(1903〜51年)
の祥月命日(28日)にちなんで、東土堂町の市文
学記念室で特別展「林芙美子と尾道文芸講演会」
が開かれている。芙美子が文学者としての素養を
育んだ尾道市立高等女学校の恩師、今井篤三郎に
宛てた書簡を初公開している。来月1日まで。
                [幾野伝]

 若き日の芙美子の文才を刺激し、人気作家とな
った後もその活動を支援、見守り続けた今井篤三
郎氏は1919(大正8)〜1945(昭和20)年、尾道
高等女学校に在任。深い親交を伝える多くの書簡
の中から、今回は1931(昭和6)年4月、尾道で
開いた文芸講演会をめぐる動きにスポットを当て
た。資料は岡山県津山市の今井家からの提供で、
1994年に尾道市立図書館が創立八十周年記念で発
刊した「尾道の林芙美子」の編集時の協力以来で、
書簡の実物が公開されるのは初めてとなった。
 講演会に関する書簡は5通1931年3月15日付け
には「井伏鱒二氏が、福山へ帰省なさいますので、
私も、急に尾道が見たくなり、..尾道で講演いた
したく思いますが、講堂はかりられましょうか..」
と恩師今井氏に企画を持ち掛けている。ちなみに
前年には『放浪記』が発刊されて60万部のベスト
セラーとなり、講演会のあったこの月には『風琴
と魚の町』が発表されている。
 しかし、尾道高等女学校が芙美子の思想を危ぶ
んで講堂の使用許可を出さなかったことについて、
次の同23日付け書簡に「思想的に云々 どうも、
お役人と言うものは、肉親の愛情はかけているら
しい。子供が親のところでしゃべりたいのは当た
り前じゃないでしょうかね。..」と残念な胸の内
を吐露し、それでも「私のおさない日を、話して
みたいきりです。会場、どこでも結構です、..」
と尾道講演への強い思いを綴っているのが分かる。
 4月28日午後6時から、2006年改修が行われ記
念館となった本通り商店街、尾道商業会議所議事
堂を会場に講演会は行われた。講演者と演題は、
井伏鱒二「チェホフを語る」、芙美子「彼女たち
へ」、尾道出身の作家横山美智子「人生と芸術」
だった。
 他に、翌年訪れた憧れのフランス・パリから見
聞の様子を伝えたものや、尾道の講演会以来親交
した井伏鱒二から今井氏への書簡4通も展示して
ある。
 命日関連の行事としては、あじさいの会と一番
街商店街の主催で24日に「あじさいき」がある。
午前11時から芙美子像を囲んで偲ぶ会で献花、
午後零時半から街かど文化館で小学生が参加して
池田康子さんが「尾道と少女フミコ」のテーマで
授業をする。

場所はこちらの「お」
おのみち文学の館(文学記念室)



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