2007年6月6日(水)
清水英子さん
 「4つの恋」に焦点当て
  研究重ね『林芙美子・恋の作家道』上程
表紙 清水英子さん
 尾道ゆかりの作家、林芙美子の研究家で尾道市
文化財保護委員、清水英子さんが『林芙美子・恋
の作家道』を文芸社(東京)から上梓した。「恋
多き人生−」と表現される芙美子の「4つの恋」
に焦点を当て、世に生み出された作品との密接な
関わりについて明らかにしている。本体1500円。
 主に尾道時代の芙美子を追究している清水さん
にとっては『林芙美子・ゆきゆきて「放浪記」』
(1998年、新人物往来社)以来の著書となった。
「恋は、林芙美子の作家道に不可欠であった。−」
の書き出しで始まる。尾道での初恋の岡野軍一、
次にパリ遊学中に出会った考古学者の森本六爾、
3人目は晩年の「サンデー毎日」編集長辻平一、
そして最後に東京日日新聞記者の高松棟一郎。
 第一章「初恋」では、作家として世に出た「放
浪記」(二部)と晩年の「浮雲」の共通テーマ、
プロット(筋道)から紐解き、「初恋は二作品の
原点なのである」と語る。
 最もページを割いたパリでの森本六爾との関係
については、「巴里日記」の記述や手紙に対して
森本が残している日記との相違を突いて、「隠し
事は書けない『日記』に、緑敏の誤解を招くこと
を恐れた日々であったといえる。芙美子の自筆
『巴里日記』には、ほんとうが書かれなかった。
森本六爾の恋が、夫・緑敏との間に介在したので
あった」と考察する。
 最終章のエピローグで夫・林緑敏に触れ、最後
に次のような仮定を想定して結んでいる。
 「もし緑敏が、己の世界よりほか周囲を見ない、
才能への没我、執着が強かったらどうだろう。
 芙美子は作家として燃え続けることができたで
あろうか。また他の男に恋をしただろうか。夫婦
の関係が変わらなかっただろうか。生活の光景は
別のものにならなかっただろうか……。
 作家林芙美子の、そのスタイルは違っていたか
もしれない」。
 第三者的、研究者としての目で綴った渾身の作
といえる。             [幾野伝]



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