2007年4月25日(水)
鞆の浦景観訴訟
 負ければ「美しい日本は幻に」
  配水権者や漁業者ら住民163人が
記者会見

埋め立て予定地を視察する弁護団
 江戸時代には尾道と並んで瀬戸内の港町として
発達、現在も秋祭りには『尾道囃子』が踊られ、
亀田市政下では定期航路が復活するなど尾道と関
わりが深い福山市鞆の浦。県と市が計画している
埋め立て架橋計画に反対、トンネルによる代替案
などを提案してきた住民が24日午後、埋立免許差
し止めの行政訴訟を広島地方裁判所に起こした。
将来期待される「世界遺産登録」の可能性を阻む
公共事業の差し止めを求める訴訟は全国で初めて。
NHKの夜7時や9時のニュースでも取り上げら
れ、全国に問題が発信された。   [幾野伝]

 「鞆の浦の世界遺産登録を実現する生活・歴史・
景観保全訴訟」(略称・鞆の浦世界遺産訴訟)の
原告団は、埋め立て予定地(港内)への排水権者
で埋め立て不同意の98人や漁業者ら鞘の住民16
3人(うち1人は排水権をもつ町外在住の福山市
民、1人は市内から鞆町への通勤者)で構成。広
島地裁に訴状を提出した原告・弁護団は続いて広
島弁護士会館で記者会見を開いた(=写真上)。
 訴状の要旨について弁護団事務局長の越智敏裕
弁護士(東京)が「埋め立てによって得られる利
益よりも、失われる利益の方がはるかに大きい。
代替案(トンネル案)への変更について、行政は
適切に比較考慮してきたのかも問いたい。得られ
る公共の利益はトンネル案でも埋め立て架橋案で
も差がないが、失われる利益はトンネル案では全
くないのに対して、埋め立て架橋案では世界遺産
に匹敵する価値が毀損されてしまう。免許を出す
ことは許されない」と説明。
 水野武夫弁護団長(大阪)は「世界中で遺産を
残していこうという動きの中で、未だにこういう
裁判を起こさないといけないこと自体が日本の恥
であり、負けることはもっと恥になる。壊すこと
は『もったいない』の極みではないか。埋め立て
免許を出す要件にいずれも適合しない。勝たない
といけない裁判であり、日本人の文化度、感性が
問われる。県と市は訴状内容を検討、理解して、
計画を断念してもらいたい」と語った。
 大井幹雄・原告団長(鞆を愛する会代表幹事)
は「20年にわたる活動で、さまざまな手段を講じ
てきた。裁判は望んでいなかったが、もうこの方
法しか残されていないのが残念。願いが潰される
ことになったら、『美しい日本』づくりは幻に終
わってしまうだろう。誰もが頷ける判断をしてほ
しい」と訴えた。
 行政に代わって民間力によって古家の改修など
を手掛けている松居秀子・原告団事務局長(NP
O法人鞆まちづくり工房代表)は「福山市は、重
要伝統的建造物群保存地区の指定に向けて行って
きた町並み保存事業を架橋の問題に絡めて止めて
しまい、その後失われた歴史的な建物は多い。市
行政の怠慢である」と批判。「橋が架かれば全て
が解決する、橋が架からないと何も出来ない、開
発=便利、保存=不便という錯覚を住民に持たせ
てしまった。もう一度根本から考え直す機会にし
たい」と述べた。
 福山市は5月の連休明けにも広島県に免許を出
願する見込みだという。6月には第1回公判が開
かれる予定で、弁護団は「早い時期に、裁判官に
よる現場検証(現場協議)を求め、いかに鞆港が
歴史的に重要であるかの証人尋問などもしていき
たい」と話している。訴訟原告団のホームページ
のアドレスは次のとおり。
http://www.tomo-saiban.net/



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