2007年4月1日(日)
24日提訴へ
「子々孫々のためにも、最後の手段」
 『日本文化』問う裁判に
   弁護団8人で鞆の浦住民ら100人原告団を
原告団あいさつ
 「鞆の世界遺産実現と活力あるまちづくりをめ
ざす住民の会」の初会合が30日夜、福山市鞆町の
国重要文化財太田家住宅で開かれ、地元住民ら
100人が出席、尾道からも有志が顔を出した。
間もなく、福山市が広島県に鞆港埋め立ての免許
申請を出す見込みで、住民の会が中心になって訴
訟原告団(100人)を結成、県を相手に公有水
面埋立法違反による「埋め立て免許差し止め訴訟」
を今月24日、広島地裁に起こすことを明らかにし
た。               [幾野伝]

 鈴木晋三・住民の会会長は「日本の歴史的港湾
の生き証人である鞆の浦を未来に残し、この町に
生まれた1人として、本当の意味での発展を願い
ながら、真の魅力が発揮される町づくりを追究し
ていきたい」とあいさつ。
 20年前から活動している「鞆を愛する会」代表
で今回原告団長になる大井幹雄さんが、15年前か
らイメージ図を作り行政に提案している『山側ト
ンネル案』などを紹介しながら、「道は狭いが車
同士でちょっと会釈する豊かさが大切なのだと大
林監督から教わった。狭いからこそ人が豊かにな
る、それが鞆の浦ではないか。鞆に自動車を通そ
うとすると、全部壊さないといけなくなる。工事
を止めるだけではダメで、そのためにも代替案を
出してきた。専門家を交えた検討委員会もやって
ほしいと県と市に訴えてきた。それが全て無視さ
れた。裁判の道は選びたくなかったが最後の手段。
真摯に受け止めて、追い返さないでほしい。どう
しても勝たないと子々孫々に顔向けができない。
ここで恐れて逃げる訳にはいかない」と静かなが
らも力強く決意表明した。
 原告団事務局長のNPO法人「鞆まちづくり工
房」代表の松居秀子さんは「福山市長は埋め立て
申請を明言している。申請が出されて許可が下り
れば、すぐに工事が始まってしまう。それだけは
絶対に止めなくてはいけない」と訴訟に至った経
緯を説明した。
 主要弁護団は、これまで多くの公害・環境裁判
に携わってきた8人で構成。弁護団長に水野武夫
弁護士(大阪)、地元の山田延廣弁護士(広島)
と川崎保孝弁護士(福山)が副団長、他に東京、
横浜からも5人が加わる。
 大阪伊丹空港の夜間離着陸訴訟、甲子園浜の自
然海浜保護訴訟などで住民勝訴(和解)に導いた
経験のある水野弁護団長は「鞆を訪ねて、未だに
瀬戸内海で自然の海岸があることに驚いた。工事
はただ浜を埋め立てるだけでなく、歴史も文化も
全てをぶち壊す計画だ。勝てる裁判、勝たなくて
はいけない裁判。これは原告団のためだけではな
い。50年後、100年後、何百年後の子や孫のた
めの戦いでもある。私は65歳でそろそろ引退を考
えていた時で、この裁判を弁護士人生の集大成に
したい」と語り、住民の同意手続きと環境配慮の
観点から問題を突いていくと表明した。
 尾道から鞆応援団として参加した長江1丁目、
大谷治さんが「江戸時代にはお互いに商売のライ
バルとして栄えた尾道と鞆が、今の時代支え合わ
なくてはいけなくなった。鞆に橋が架かることは
もうないだろう、大丈夫だろうと高を括っていた。
羽田市長も本当は、橋を架けなくてもいいんだっ
たら、架けたくないいと心の底では思っているの
ではないかと信じたい。振り上げた拳が下ろせな
くなっているのではないかと思う。裁判という形
になったのは残念」とあいさつ、先日東京で立ち
上げた住民の会を支援する会の呼びかけ人、大林
宣彦監督からの次のようなメッセージ(一部)を
代読した。
 「今の日本という国と日本人にとって、決して
忘れてはならない大切な事に、鞆の浦を古里とす
る皆さんが率先して向き合おうとされています。
何かしらこの日本が再ぴ、『美しい日本』として
再生するための、良き息吹がここから始まるよう
な予感がして、とても嬉しく、誇らしく思います」。
 出席していた浅野洋二・県議候補(現職公明)
は「もう一度鞆の歴史を紐解いて、世界的な魅力
を守っていきたい。今のおかしな県政を正してい
きたい」と語った。
 水野弁護団長は出席者からの質問に答え、「裁
判の迅速化が言われているが、大きな裁判になる
ので2年以内とはいかないかも知れない。裁判所
はこれまでは行政のやることには実に及び腰だっ
たが、最近は変わってきている。もしこの裁判で
勝訴できない、裁判所がこれを止められないとい
うことになれば、世界に向けて恥ずかしいことに
なる。ある意味で日本の文化度を問いバロメータ
ーを示す裁判になる」と話し、大きな拍手を受け
た。
 さらに係争中に工事許可が出されそうになった
場合は、本裁判とは別に仮差し止め訴訟を起こす
ことも視野に入れる。
 「全国の多くの方に応援頂いているのだから、
さらに我々が地元の賛同者を増やそう、勇気を持
って声をあげよう」という意見もあがった。


「歴史の道」見直し必要
毛利和雄さん講演で鞆の浦
 尾道出身のNHK解説委員(文化財担当)、毛
利和雄さんが30日午後、尾道ロータリークラブの
例会ゲストに招かれて、「世界遺産と尾道」のテ
ーマで講演、鞆の浦の埋め立て架橋問題にも触れ
た。
 世界遺産制度の歴史や仕組みを説明しながら、
「現在、国を超えて国際的な繋がりの中での世界
遺産登録の潮流が見られるようになっており、鞆
の浦で言えば日韓共同で『朝鮮通信使の道』での
世界遺産も考えられる」と提案。
 さらに今年夏にも世界遺産に登録される見込み
の石見銀山にも触れ、「石見の銀は尾道まで来て、
大阪に向けて運ぱれたが、ここで歴史の道、銀山
街道をもう一度見直してみてはどうか」とも語り、
「最近は世界遺産も1ケ所ではなくて、連携する
所を合わせて登録するという動きがあり、ザビエ
ルの布教の道や朝鮮通信使の繋がりが挙げられて
いる」と紹介した。
 「鞆では空き家や歴史遺産を活かした町づくり
が進んでおり、もし工事が行われると、長年にわ
たってダンプカーが町に入り込み、こうした町並
み保存の動きは言葉はきついかも知れないが『圧
殺』されるだろう。便利か不便かの二者択一では
なく、鞆の町づくりそのものが問われているのだ
と思う」と語った。



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