2007年2月9日(金)
長野から尾道取材
今夏の映画公開前に特別番組を
 町見詰めるチャンスに
  《転校生》導いた江守健治さん 
天寧寺上で
 「大林映画の聖地をどうしても見ておきたくて」。
昨年11月に信州・長野をメイン舞台に、尾道でも
ワンシーンを撮影、今夏劇場公開される大林宣彦
監督の長野映画《転校生》−さよならあなた−の
制作を市民の立場で物心の両面から支えた長野市
の映像制作会社代表、江守健治さん(56)が7日、
監督の古里である尾道を訪れ、尾道映画の生誕地
を巡った。            [幾野伝]

 江守さんは、毎年秋に長野市で開かれている
「みすずかるしなのNAGANO映画祭」の企画
運営に事務局長で携わっており、2004年10月、映
画《理由》の上映で第1回映画祭に訪れた大林監
督と夫人の恭子プロデューサーに、「50年先の長
野の子供達に見せたい映画を作ってもらえないか」
と直談判したのが映画《転校生》の長野ロケーシ
ョンにつながった。
 昨年10月末のクランクインに合わせて、「地域
が一体になって、長野を舞台に選んだ監督の思い
に応えよう」と有志10数人とともにポランティア
グループ「21世紀長野映画の会」を結成、約1ヶ
月に亘るロケ期間中、現場の雑用や撮影に必要な
大道具、人手の手配、後片付けなど裏方の仕事に
徹した。(財)ながの観光コンベンションビュー
ロー内にある「ながのフィルムコミッション」と
は連携しながらも、別の市民組織として撮影を支
援した。
 SBC信越放送(TBS系列)の制作会社で長
年カメラマンをつとめ3年前に独立、自分の映像
制作会社で現役のカメラマンを続けている江守さ
んは、今年夏の映画公開に合わせて特別番組を企
画。その事前取材もあって今回初めて尾道を訪れ
たもの。
 26年前の《転校生》で、主人公の2人の身体が
入れ替わる、印象的な場面が撮影された御袖天満
宮のある長江地区をはじめ海岸通り、商店街、土
堂地区の山手などをゆっくり歩いた江守さんは
「小路に入ると、本当にすぐに迷路ですね。石段
を少し登ると全く違う風景が広がります」と、四
方を高い山に囲まれた長野とはまた違う町の魅力
を体感したようす(=写真上)。尾道水道沿いに
築かれた重厚な防潮堤については、「これでは何
だか人と海とを隔てている感じがします」と正直
な感想を語っていた。
 「長野は1998年のオリンピックで東京・大阪の
大都市の資本が大量に入って経済的に湧いたが、
今は潮が引くように企業の撤退や倒産が相次いで
いる。こういう大切な時期に映画《転校生》が長
野で撮影された。フィルムコミッションなどは、
映画を経済的な効果としてだけ見ているが、自分
達の町はどういう町なのか、ここで足下を見詰め
直すチャンスをもらっているのだと思う」と江守
さん。「どうして監督と恭子プロデューサーが長
野を撮影地に選んだのか、長野と尾道を通して古
里を考える番組にしたい」と抱負を語っている。
 番組の収録で近く尾道を再訪するという。長野
市からは昨年11月、「長野市民新聞」の記者が取
材で尾道を訪れており、《転校生》が結ぶ「長野
と尾道」がメディアによって注目されている。




ニュース・メニューへ戻る