2006年12月3日(日)
美術監督
 「撮影現場いつも一緒」
   薩谷和夫さんに無事の撮了報告
 「薩チャン、いつも見守ってくれてありがと
う。また転校生を撮ったよ−」。映画《転校生》
の撮影を古里の尾道で無事終了した次の日の朝、
大林宣彦監督(68)と夫人の大林恭子プロデュ
ーサー(68)らが、吉浦町の臨済宗西願寺(岡
田慈照住職)に眠る美術監督、薩谷和夫さんの
墓参りをし、クランクアップを報告した。
                [幾野伝]

 薩谷さん(東京生まれ)は、もとは東宝映画
の美術監督で、大林監督とは1977年公開の映画
《HOUSE/ハウス》で出会い、1981年撮影
の《転校生》の時に独立して以来、監督夫妻の
良きパートナーとして、その後の《時をかける
少女》や《さびしんぽう》、《ふたり》などの
尾道映画をはじめ全ての作品に参加、大林映画
を支えた。一年の大半を尾道で暮らしながら、
帰省してくる監督夫妻を「お帰りなさい」と尾
道駅で出迎え、「いつかは、大好きな監督と恭
子さんと一緒に、大好きな尾道で暮らしたい」
と言いながら1993年1月、57歳で他界した。
 25年前の前作同様、今回もロケ場所に選んだ
尾崎本町の「鵤邸」での撮影には、スタッフ同
士の付き合いを越えて親交の深かった新浜2丁
目、大道具担当の大田貞男さん(大田建築設計
事務所社長)が、タバコに火を付ける在りし日
の薩谷さんの写真を持参。監督は「薩チャン、
今日もそばに居てくれよ」と話し掛けながら、
「本番、よーい、スタート」と声をあげていた。
 「尾道と映画をこよなく愛し、尾道と映画と
を愛する人を何よりも大切にした人だった−」
と監督夫妻。今もロケ地めぐりの旅人を案内し
ている尾道三部作「ロケ地イラストマップ」は
薩谷さんが制作したもの。「尾道は人が生きて
生活している。それが風景を創りあげているか
ら、新しいものと古いものが上手く溶け合って
いる」と生前の薩谷さんは記している。



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