2006年7月4日(火)
世界遺産で講演
日本イコモス国内委員会の益田兼房さん
 『鞆の浦の価値』改めて強調
   広島は3候補あると平山先生−
益田教授
 世界遺産の選定調査や評価を行うユネスコの諮
問機関「イコモス」の国内委員会メンバー、益田
兼房・立命館大学教授が1日夜、福山市内で講演
した。教授は「平山郁夫先生は、広島には世界遺
産になる候補が3つあると言われた。宮島、原爆
ドーム、そして鞆の浦。ユネスコ親善大使で文化
に造詣が深い平山先生の発言は、文化財に携わる
我々にとって非常に重く、このなかで唯一取り組
みが遅れている鞆が重要伝統的建造物群保存地区
の指定を受け、県と市が現在の架橋・埋め立て計
画を見直せば、充分に世界遺産に登録される可能
性がある」と言い切った。同時に瀬戸内海全体で
の登録の可能性も示唆した。    [幾野伝]

 福山・鞆の浦の町守り運動から視野を広げて発
展させた「瀬戸内海を世界遺産にしよう会」の準
備委員会(岡田吉弘委員長)による第2回瀬戸内
世界遺産セミナーで、尾道からは山戸重治市議の
姿があった。
 もと文化庁建造物課で全国の町並み保存や世界
遺産登録の推薦などを担当してきた益田教授は、
ユネスコの誕生(1946年)から世界遺産のス
タート(1972年)、そこに込められた平和の
願い、さらに町全体を文化財として保護活用する
ヨーロッパと日本との考え方の違いなどをスライ
ドとともに紹介。さらに世界遺産条約への批准が
世界で125番目(1992年)でとても遅かっ
た日本の事情や背景、批准時の裏話、原爆ドーム
を巡るエピソード、登録基準や手続きの流れなど
を担当してきた立場から分かり易く説明した。
 「1.国宝とか名勝庭園のコアとなる文化財があ
って、2.周りを重要伝統的建造物群保存地区の指
定など国内法での保護がしっかりされて、さらに
3.周辺にそれを保護していく緩衝地帯が設定され
ている、この3点が整った所を日本は世界遺産に
出す条件にしている」と語り、「現在、世界遺産
にしたい−と全国で百何十ヵ所が手を挙げている
が、これはそれぞれ地元が言っているだけであっ
て、政府はそれらを暫定目録に入れることに慎重
な構えをしている。1.〜3.の国内法の条件が整っ
ていない所が多い」と指摘した。
 そんななかで鞆は、「歴史的な港湾土木の遺産
が5点セット(雁木・波止場・焚場・常夜灯・船
番所)で残り、これは鞆以外に東アジアには存在
せず、朝鮮通信使の遺跡もあり、国際的な性格を
持っている」ど改めて高く評価した。



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