2006年5月2日(火)
大林宣彦監督
 映画の強さ美しさ信じ『沸き立つ思い』
  大分で2作目映画クランクイン
舞台に並ぶ出演者 監督とプロデューサー
 大林宣彦監督(68)が再び九州・大分でメガホ
ンを−。映画《なごり雪》から5年、大分シリー
ズの2作目となる《22才の別れ Lycoris
葉見ず花見ず物語》が大安の29日、大分市内でク
ランクインした。「今、沸き立つ思いで、全身が
満たされている」と大林監督。撮影は他に福岡市
や別府市などでもあり、6月初めまで続けられる。
監督は今年、今作品を含め3作の劇場映画を製作
する。              [幾野伝]

 《22才の別れ》は、《なごり雪》(2002
年公開)に続いてシンガーソングライター伊勢正
三さんの名曲『22才の別れ』をモチーフにした
オリジナルの同名作品。迷い、閉塞感の中で生き
る40代の男性の青春の思い出と現在の恋心の物語
を通して、現代社会を手繰り寄せようとする「純
粋恋愛映画」。キーワードは彼岸花=Lycor
is(リコリス)。主演は筧利夫さん。新人女優
2人の他に窪塚俊介さん、岸部一徳さん、蛭子能
収さん、南田洋子さん、三浦友和さん、村田雄浩
さん、長門裕之さん、清水美砂さんら。筧さんは
「大分の町の風景に溶け込んで、頑張りたい」と
意欲を語った。
 前夜には主なロケ地となる大分市、臼杵市、津
久見市の市民有志による歓迎パーティーが開かれ、
3市長はじめ約170人が出席。釘宮磐・大分市
長が「素晴らしい作品を作り、大分を全国にアピ
ールして頂くためにも全面的に協力したい」とあ
いさつ。
 50人にのぽる全スタッフが登壇、大林監督は
「映画とは、映画の内だけに留まるものではなく、
私達の暮らしや社会と大きく関わっていて、世界
を少しでも幸せな方向に近付けられる力を持って
いると信じている。自分の映画がどれほど役立っ
ているかと考えれば、無力感を感じることもある
が、大分に来るともう一度映画の強さと美しさを
信じよと教えてもらえる。東京を出発する時、
『沸き立つ思い』という言葉が心に浮かんだ−」
と現在の尾道の姿にも触れながら心中を述べた。
 「私は、みなさんに私の映画に協力して頂いて
いるという思いはなく、みなさんの古里への愛を
表現することに、私も一緒に参加させて頂いてい
ると思っている」と続け、さらに「今日本の映画
界が変わってきたと思う。昔は小津さんや黒渾さ
んの映画でも消耗品として、一過性で、オリジナ
ルのネガさえも保存されていない、文化の喪失を
繰り返してきた。それが、私の所にくる映画製作
の依頼では、50年先の子孫達に残してやりたい映
画、あるいはその映画を生かして社会や世界の平
和作りに貢献したいとの趣旨を言われる。色んな
メディアがミックスする中で映画の命は膨らみつ
つある」と現状を織り交ぜた。
 「穏やかさ、心の根の豊かさや賢さをもった大
分の町で、21世紀の私達の幸せ作りの資源となる
べく映画作りを始められる、その沸き立つ思いで
全身が満たされている」と表現者としての決意で
結んだ。
 後藤國利・臼杵市長は「尾道にも何度も伺って、
下支えするスタッフの方とお付き合いさせて頂く
なかで、映画とは温かい心があって初めて出来る
のだと勉強させてもらった。監督の信頼に応える
ために、ものほしげではなく、純粋にいい映画を
撮って頂くために力の限りを捧げたい」とあいさ
つした。
 「何作撮っても、この日だけは緊張する」と語
る初日の撮影は、夜間の大雨を降らせるシーンで、
明け方まで行われた。



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