2006年2月1日(水)
「鞆の浦」架橋計画
 人間の目線でどう変わるのか?
 住民団体チラシを ミニバス運行など代替案も 
現在の写真と架橋時の予想
 歴史の町・スモールタウンには「らしい」生き
方があります−。福山市「鞆の浦」の埋め立て架
橋計画で、地元の9つの住民団体が、架橋によっ
て現在の風景や環境がどのように変わってしまう
のかを、合成写真などで知らせるチラシを制作し
た。福山市、広島県がすすめている計画の見直し
と、「山側トンネル案」や町の南北への駐車場整
備、さらに町なかを巡る「ミニバスの運行案」な
ど、別の方法による「利便性と環境の調和」を掲
げた代替案を提示している。
 A3判カラー刷りの2つ折りで、「″その時″
の風景はこうなる..」として、常夜燈や石積み雁
木が残り鞆の中心といえる「いろは丸展示館」前
の現在の風景と、架橋が出来た後を合成写真で比
較(=写真)。目の前を横切ることになる橋梁と
その上を行き交う自動車を描き込み、計画がいか
に無謀であるかを視覚で訴えている。
 さらに「海風は排気ガスを町の方へ運んでくる
ことになるでしょう。夜中には騒音も遠くまで聞
こえてきます」と住民の健康面にも触れ、「..路
地は風の通り道です。通過交通道路を町の南面に
もってくるのはまちがいです」と自然環境の悪化
も指摘している。
 代替案は、コストが安く工期も短いとされ、さ
らに排気ガスや騒音の心配もない「山側トンネル
案」をはじめ、町の出入り口となる南北地点に大
きな駐車場を整備し、町なかとを結んで巡回する
ミニバスの運行など、新たに提案している。
 「私たちは、この地を築いてきた幾多の先人の
遺産をまもり、さらに子供たちの子供たち、その
子供たちへ伝える責任があります。別の方法があ
ります。今だけではなく、ぜひ過去から未来への
歴史軸で考えてください」と呼び掛け、最終ペー
ジには「鞆だけではない..狭い道」として尾道を
登場させ、「尾道市の山側の坂の町はどうですか?
鞆はこれにくらべるとはるかに恵まれているので
はないでしょうか。こんなに狭くて、しかも急な
坂道を尾道市民は愛し、逆手にとって観光資源に
しています。..」と綴っている。
 福山市も完成図などを作成し公表しているが、
上空から見た鳥瞰図的で広範囲なものばかりで、
NPO法人鞆まちづくり工房の松居秀子代表は
「これまで行政には、人間の目の高さで、どう風
景が変わるのかを示しで欲しいと訴えてきたが、
聞き入れられていない」と憤っている。
 1万部作って、鞆町内の約2000ある全戸に
配布した。住民による9団体はつぎのとおり。鞆
を愛する会▽鞆の自然と環境を守る会▽鞆の浦海
の子▽福山まちづくり円卓会議▽元町一町内会▽
歴史的港湾鞆港を保存する会▽アートさくら▽N
PO法人e&g研究所▽NPO法人鞆まちづくり
工房。
                 [幾野伝]

転載責任者メモ:尾道の開発の際もそうでしたが、私は「外から見るとどう見えるか」は
        言いますが、賛成反対は言いません。長年住んでいる方にしか分からない
        事情があるからです。

        私は鞆の浦でこの話を聞いて、実際に海岸で想像もしてみましたが、
        橋が出来たらもう来たくないな、とは思いました。これはたった1人の
        まれにしか行かない観光客の感想としてです。

        観光で行くときは福山からバスに乗り、海岸にある停留所から歩き始める
        のですが、橋が出来て便利になることは何もありません。もし少しぐらい
        あったとしても、失う物(風景)が大きすぎるので比べものになりません。
        鞆の浦に着くまで、渋滞で困ったということもありません。従って、開発
        推進派の方が「観光的にもメリットがある」と言っているとすれば、その
        点だけは「それはないでしょう」と言っておきたい。

        車で行く人にとっては駐車場が少ないでしょう。これは橋と関係なく、町の
        手前に駐車場が必要かもしれません。そこから町へ遠ければ、特別なイベント
        期間中だけでもミニバスを走らせ、パーク&ライドも良いでしょう。

        橋がそれ自体見どころになるような美しさがあるようでもないので、もっぱら
        観光以外の利便性のためということになります。そうなればもう、観光客の
        私に口を出せる場面はありません。

        救急車が狭い道を通るより橋を通り抜ける方が速いことは誰がみても分かる
        ことです。橋さえあれば助かったのに、などと人殺しのように言われたら、
        見た目だけで語る観光客は黙るしかありません。伝統ある町並みと暮らしやすい
        町作りの折り合いをどう付けていくか。これは尾道の坂道風景の保存でも同じ事が
        言えます。とにかく注目だけはしていきたいと思っています。そしてどう決まっても
        文句を言うつもりはありません。

        地元の方はずっと住まないといけない。観光客は行かなければ見ずにすむ話です。


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