山陽日日新聞ロゴ 2004年7月3日(土)
文化庁から技官
旧福井邸(文学記念室)、旅館「竹村家」
 『登録文化財』に名乗り
  水道局の長江浄水場、久山田貯水池
 俳句の季語の宝庫といわれ、文化財や文化遺産が
数多く点在する尾道の眠れる文化財に陽が当たる。
平成8年度に国が制度化した「登録文化財」に今年
度、初めて尾道市が名乗りを上げ、1日から2日に
かけて文化庁から技官が調査のため来尾した。

(順に足を運んで写真などに記録し、尾道市が用意
した以上の評価を受けた。視察の様子などは転載を
割愛させていただき、文化財係が作成したという各
文化財の資料を以下に転載します<転載責任者>)

福井邸
旧福井邸(文学記念室)
 尾道市文学記念室(旧福井邸)は、市街地北の千
光寺山中腹に位置し、尾道水道と尾道旧市街地を見
渡す風光明媚な場所に位置し、現在のJR山陽本線、
国道2号線が市街地の東西を貫くことによって住宅
地として開発された地区で、通称山手地区と呼ぱれ、
当時、ここに居住することに憧れを抱かれた、今で
言う高級住宅街に位置する。
 建物は東棟、西棟、茶室が有機的に配置されたも
ので、故福井太郎氏先代の故福井英太郎氏によって、
大正元年(1912)東棟が、昭和2年(1927)
西棟がそれぞれ完成し、昭和3年(1928)には
同敷地内へ茶室が完成して現在に至っている。
 内部は、建築資材として檜を中心として楓、松、
鉄刀木(タガヤサン)等の木材が用いられ、また当
時、英太郎氏妻マン氏が茶道と深く携わっていた関
係で、室内の造りへ随所にその造形が取り入れられ
ている。
 また、当時としては、時代の先端をゆく台所、洗
面所、作りつけ家具、収納庫等が機能的にまとめら
れている等の特徴を有し、外観の意匠と造作はもと
より、茶室と庭園の配置バランスなど、全体的に旧
市街地山手地区に存する「お屋敷造り」の代表的邸
宅である。
 こうした立地環境や建物条件から、太陽は泣かな
い(1976年作品。松原智恵子主演)、あの夏の
日(1998年作品。大林宣彦監督)の映画ロケ地
として使用されている。
 尾道市では、平成10年(1998)故福井太郎氏
没後、妻益子氏の希望により尾道文学記念室として
建物並びに庭園管理を行い、多くの市民をはじめ観
光客が来訪し、お茶会などの催しや、尾道市立尾道
大学のセミナーハウスとして活用されている。

竹村家玄関
竹村家(久保三丁目)
 尾道市役所前の海岸通りを東へ向かうと、尾道市
の繁華街、いわゆる新開と呼ばれる地域に、尾道水
道と防地川河口に面した堂々たる純和風寄せ棟造り
の建物がある。
 今は暗渠になっている防地川が海に注ぐ河口を埋
め立て、新開地としたのは明治の頃である。その後、
瀬戸内の海上交通の発達に伴う尾道の賑わいと共に、
この地区は一大繁華街を形成し、現在もその名残が
うかがえる場所である。
 竹村家は、江戸時代「竹原屋」を祖とし、竹原屋
半七の時代に半七の息子利助が分家して「竹半(ち
くはん)」を名乗った。その後、利助次男の庄吉が
竹半を継ぎ、旧尾道市久保町乙15の1の場所も埋立
てとなった頃、利助四男の竹松が明治37年(1904)
尾道最初の西洋料理店「竹村家」を開業したが、大
正7年(1918)9月に火災にあい焼失した。
 新たに大正9年(1920)、日本料理屋として
家業を再開・開店して現在の建物になり、昭和20年
(1945)7月には第3次強制疎開の為、極一部
を壊したが、終戦後すぐ復旧工事を行い、現在に至
っている。
 建物の外観は、入母屋寄せ棟造り木造2階建ての
純和風建築であり、瓦や壁面の色調や造作と相まっ
て、全体的に重厚な印象を与える造りとなっている。
建物内部は、和風客室15室、60畳の大広間I室、応
接室他を備え、建物入口に門、玄関と控えの間を備
える等、堂々とした建築様式である。
 各客室は、いずれも書院造りを基本とし、内装に
は屋号にちなんだ竹材細工や竹材造作が随所に用い
られ、出書院や格子細工、格天井、網代天井、和造
作障子が多用されている等、当時の大工技術の粋に
あふれた内装を特徴としている。また、各室内同様
廊下にも竹材を用いた格天井、あるいは船底天井等
の造作もあり、2階の天井も高く、尾道を代表する
割烹旅館にふさわしい、純日本的な落ち着いた空間
を醸し出している。
 この建物は、映画「東京物語(小津安二郎監督作
品、原節子主演)」の尾道ロケ地として使用されて
おり、尾道水道に面した建物位置と相まって、港町
尾道にふさわしい和風建築として知られている。建
物は、保存状態がよく、外観内装とも全体的にバラ
ンスの取れた格調高い造りを特徴とし、高い技術に
裏打ちされた意匠が随所に認められる。敷地の周り
には築地塀をめぐらせてある等、大正期の純和風割
烹旅館の姿を濃厚に秘めた建物である。

植物に被われた貯水池壁面
尾道市水道局久山田貯水池
 新尾道駅から北西方向へ尾道大学(2001年4
月開学)を訪ねると、満面の水をたたえた久山田貯
水池の堤防が目に入る。途中の道もよく整備され、
心が和やかになれる尾道らしい空間である。
 尾道市の上水事業は、山口玄洞翁(故人、尾道市
名誉市民)から総事業費の74%にも上る多大な寄付
に支えられて、1925年(大正14年)4月に計画
給水人口37000人、1日最大給水量4500立
方メートルでスタートし、現在は計画給水人口97680
人、1日最大給水量40000立方メートルに達し
ている。
 久山田貯水池は、1919年(大正8年)来尾中
の九州帝国大学工学部の和田義陸講師が「貯水式工
法(ダムを造って貯水する)」に基づき、第一候補
地に御調郡深田村字久山田(現在の尾道市久山田町)
を推薦された。当時、貯水式水源を有していたのは、
明治38年に完成させた神戸市だけであったが、本市
も「貯水式工法」で貯水地を造ることを決断し、元
神戸市水道課長の水野広之進氏に調査設計を依頼、
顧問に佐野常次郎博士を、技師長に水野広之進氏を
委託し、具体的計画に着手した。
 久山田貯水池は、当時としてはめずらしいアーチ
ダムと重力ダムの中間形式で、荷重を両岸及び河床
の両面に伝えるアーチ作用と安定性を待たせる最新
式の工法を採用し、強固な中にも優美さがうかがえ
る意匠となっている。
 平面形状は、アーチダムのように曲線形状をなし、
断面形状は重力ダムのように厚く堤体全体が粗石モ
ルタル積(粗石モルタル積棋式堤防、表面張石)と
なっており、前後の地盤の取り付けは崩壊を防ぐた
め土留石垣を築造し堤防の内部に半径1.515m(五尺)
半円形の点検孔を設け、中に直径300mm(12吋)
の竪直管を設置し、同径分岐管3か所を池内に突出
し、上、中、下、三層より適宜に導水し、竪直管の
下端は、同径の導水管に連絡し、長江上水道に導入
している。別に泥吐管を底部に設け灌漑用水放流、
泥吐を兼ねている。
 この点検孔は、鉄梯子(転落防止のため3か所の
踊り場設置)にて内部点検ができ、今日でも内部へ
空気送風後(酸欠事故防止)、内部及び仕切り弁点
検作業を行っているが、水漏れもなく、当時の技術
水準の高さがうかがえる。
 その後、1934年8月(昭和9年)の貯水量ゼ
ロ、全市初の断水、幾たぴの制限給水などがあり新
たな水源探しに奔走し、1935年(昭和10年)三
原市中之町坂谷山より500立方メートル/日、
1954年(昭和29年)三原市深町高平ダムより
1000立方メートル/日、自然流下で久山田貯水
池に導水管により導水している。

水をたたえる浄水場
尾道市水道局長江浄水場
 新尾道駅より、南方向へ県道栗原長江線、千光寺
公園登山道入口近くの、小高い丘陵(槙ケ峠)に長
江浄水場がある。これは、1925年(大正14年)
久山田貯水池とともに創設時に築造された尾道市水
道局唯一の浄水場である。
 この浄水場は計画給水人口37000人、一日最
大給水量4500立方メートル/日でスタートし、
現在、広島県沼田川水道からも一部上水受水をして
いる。
 久山田貯水池より導水された原水は、着水井にて
水流の勢いを弱め、三角ノッチにて計量し、緩速ろ
過池に入り細かい砂層を緩やかな速度で通過するこ
とにより、表面の生物ろ過膜により浄化され、配水
池(浄水池と兼ねる)に貯流され滅菌後、計量室
(当時ベンチュリー計量器)にて配水量を計量し給
水する。
 緩速ろ過池4池(1500立方メートル×4池)
は3池を常用とし、1池を洗砂用予備池としている。
円形配水池の中心より外半径48.48m(160尺)、
内半径24.24m(80尺)の扇形にして1池当たり30
度の角度、他の二辺は直線で、外壁は表面粗石張り、
地下式円形配水池と直結して、配水池をとりまくよ
うに扇形を形成したろ過池は美観的にも工夫された
構造となっている。
 配水池は1644立方メートル(822立方メー
トルx2池)直径27.27m(90尺)円形とし、中に
円形2条導流壁を設け、中央の隔壁で二分する。池
の中心部に円井を設け中に4個の量水器室を並列し、
各ろ過池の送水管にて送水し、ろ過速度を調整する。
円井には上屋(通称六角堂)を設け管理機器等を設
置している。配水池及び計量室、上屋は築造当時の
ままで、現在も稼働している。当時は、標高約60m
の高低差を利用した自然流下方式のみで、市街地ヘ
給水していた。
 この配水池の特徴は、水平迂流方式(水流自体の
エネルギーによりS字型に大きく蛇行することによ
る撹絆作用)により池中心部の量水器付近で投入の
滅菌水(塩素に水を加えたもの)の滅菌効果を上げ
るように設計され、他の水道に見られない構造とな
っている。
 また、この浄水場への導水も久山田貯水池との高
低差を利用した自然流下方式で導水しており、導水
から給水まで動力源を全く必要としない効率的な設
計となっている。



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