山陽日日新聞ロゴ 2004年6月29日(火)
大林監督夫妻祝う会
 映画で古里に恩返しを
  亀田市長「尾道にはこれだけ応援団が」
会場の様子見送りに並ぶ監督夫妻と、市長ら発起人
 映画作家、大林宣彦監督(66)の紫綬褒章受章を
祝う会が二十六日夜、尾道ポートプラザホテルで聞
かれた。来賓に藤田雄山県知事を迎え、市内外から
230人が出席、監督夫妻のこれまでの映画人生を
称え、これからのさらなる活躍と支援、尾道文化の
向上を願う会となった。
 発起人の1人、片山壽・尾道市医師会長が、父親
同士で家族ぐるみの付き合いがあった思い出を披露
し、「今日が尾道にとって歴史的な夜になって欲し
い」と開会あいさつ。亀田良一・尾道市長は「大林
監督は、昨年が生誕百周年だった《東京物語》の小
津安二郎監督を引き継いで、尾道の良さを全国に知
らせてくれた第一人者。尾道にはこれだけの応援団
がいる。まだまだ道半ば、これからも頑張って欲し
い。大いに期待します」と語り、握手を交わした。
 藤田県知事は「大林監督にとっても、尾道にとっ
ても素晴らしい章を頂いたと思う。尾道は、千年を
超す古刹、戦火を免れ残った古い町並みと現代的な
物が見事に解け合って、市民の皆さんの生活の舞台
になっている。文化や芸術に対しての理解が深く、
日本中探してもこんな町は尾道しかない。町から山、
海と島、全てが揃っている。それを見ながら育った
監督が、ファインダーを通して尾道の魅力を日本中
に教えられた。結果、多くのお客様が大林映画の舞
台を見たいと来られるようになった。お礼を申し上
げたい。さらに作品を作り続け、今以上に文化度の
高い町になってほしい」と祝辞を述べた。
 記念品贈呈では、今年96歳で現役眼科医の高橋
聿治さんが「特別な才能に恵まれて、尾道を基点に
国内は勿論、世界に向かって羽ぱたいておられる。
これからも大いに皆さんを楽しませて頂きたい」と
語り、備前焼作家佐藤苔助さん作の大壷を手渡した。
 監督は「なんだか今日は雲の上にいるようで嬉し
い。しかもここは尾道。懐かしい顔が一杯で、やは
り尾道にいるとどんどん小さな子どもに戻っていく
気がする」と話し始め、「4、5日前にも小さなデ
ジタルカメラを持って、尾道の町を撮影した。子ど
もの頃尾道で活動写真に出会って、父親から譲り受
けた8ミリキャメラを手に、海や山を駈け巡ったあ
の時にふと戻りたいと思った。25年前の《転校生》
と同じコースを同じスケジュールで撮影してみた。
最初は難しいかと考えていたが、見事少年のように
駈け抜けることが出来た。これは他の町では無理、
やはり尾道だから出来たのだと思う。この町の風景
に包まれていると、キャメラがある限り、少年のよ
うに坂道や石段を駈けることが出来る」と今回のロ
ケを振り返った。
 以前、東京の藤田知事の会社で見たサメ用の水槽
の中で大きくなったキンギョ(=もともと遺伝子的
にはフナ)の話を例に、「実は私たちも無理矢理、
金魚の姿をさせられていたのではないか。これから
は古里のフナとして生きるべきでは」と続けた。
 「父は自然に寄り添った『五風十雨』を、母は
「浦島太郎」の話から、良いことをしたから偉い、
御褒美が貰えるなどと思ったら、結果バチがあたる
事を教えてくれた」と両親から授かった多くの言葉
の中から紹介。
 さらに「亀田市長が当選されて、『これからは尾
道の町をみだりに壊さず、みんなで大事に雑巾掛け
していく』と言われた時、私の尾道での映画の戦い
は終わったと思った。今山の手を歩いていると、古
い家に若い人が住み着いて、いきいきと暮らしてい
る姿が見られ、私は誇らしい。尾道は古き文化を持
つが故に、新しい幸福をも持つことができる。私も
ささやかながら、尾道のあしたをつくる力に参加し
たい。50年連れ添ったプロデューサーの妻と映画
を作ることがご恩返しになると思い、愛する皆さん
の古里で映画を作り続けたい。ベテランの子どもと
して過ごしたい」と結んだ。
 発起人の佐藤忠男・尾道商工会議所会頭が「ます
ますのご活躍を」と乾杯発声。
 北高校の1年と3年時に担任教諭だった恩師、天
河義彦さんが「3年生の時文芸の道を選んだ。お父
さんとお母さんに感謝しながらいつまでも頑張って」
と激励。小学校から大学まで同じ学舎で過ごした会
世話人の宇根本忠信さんが思い出話を披露。「尾道
大林組」の吉田多美重さんは「これからもたくさん
の作品を作り、必ずやまた尾道で映画を撮影される
ことを願います」とスピーチした。
 監督と恭子さんは出席者1人ずつと歓談。最後に
世話人の手塚弘三さんが「みなさんに、我々の町に
祭りが必要か如何かと尋ねたら、多くの方が祭りは
必要と答えると思う。合理主義者は祭りを無くすと
いう言葉がありますが、祭りがあるから私たちの暮
らしが豊かになる。ならば、尾道を舞台に映画を撮
ることは如何かと尋ねると、それは尾道で撮って貰
いたいと答えるに違いない。ではその映画にあなた
はどの様に関わるのですかと聞くと、この辺りから
徐々にトーンダウンしたのが今まで。監督が尾道を
舞台に映画を作るにあたって、快適に仕事が出来る
ように私たちが応援していくべきだと思う。今日の
出席者が心を一つにしてこれから2作、3作と新し
い映画が生まれることを祈念したい」と語り、締め
括った。



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