山陽日日新聞ロゴ 2004年2月1日(日)
「石見銀山街道」
日本のシルクロード「尾道〜温泉津」
 世界遺産もう1つの視点
  尾道のためのガイドブックを刊行
表紙
 『尾道』というまちを知る上でも、また世界遺産登録を
めざすためにも、尾道にとって貴重な『教科書』が発売さ
れている。講談社刊の週刊「日本の街道」シリーズのNo.88
「石見銀山街道」〜尾道から温泉津(ゆのつ)へ〜(560円)
がそれ。世界遺産登録のもう一つの視点としての″宝石″
がちりぱめられている。
 本紙では、主に啓文社尾道福屋店の協力を得て、尾道関
連の出版物・書籍の有益なものは継続して紹介してきた。
 その中では、最近では「家庭画報」の昨年2月号や、陰
山学校を追跡レポート(子どもの生き生きとした眼の輝き)
している「プレジデント」が出色の出来だが、今回の「石
見銀山街道」は尾道人のものを見る視点から、どちらかと
いえば忘れがちであっただけにより有益といえる。
 とくに、世界遺産登録をめざしてを「まちづくり」の根
幹に据えた尾道にとって、尾道三山と古寺群プラス瀬戸内
海という現在の捉え方と、もう一つは陰陽結節の位置づけ
が昔から存在しており、なおかつ「石見銀山」が世界遺産
登録へ向けて先行しているだけに、これとの″連携″は意
味が大きいといえる。
 昨秋、経済同友会の招きで講演した尾道出身の木曽功・
文化庁文化財部長(世界遺産関係の日本の担当者)も講演
の中で「石見銀山」と「石見銀山との連携」に言及してい
る。この示唆をどう受け止めるかという視点も今日的に大
事といえる。
 全部で34ページの同ガイドブックは、表紙をめくって見
開きが「浄土寺山頂からの眺望」。続いて、尾道から温泉
津の石見銀山街道のマップ付き説明で、順に尾道、浄土寺、
西国寺、御調八幡神社、仏通寺、甲山、吉舎、三次、布野、
赤名、小原、大森と進み石見銀山が代官所、松田家、羅漢
寺、豊栄神社から古浜、温泉津で日本海に達している。
 続いて、尾道が倉敷地、遺明船の寄港地などとして紹介
され、石見銀山までを順次紹介。人物探訪が徳川家康の側
近の銀山奉行大久保長安。石見銀山の解説が全7ページ。
 温泉津まで行って、3度尾道に戻り、「坂の町尾道の情
緒や石見国の神々。山陽・山陰の伝統と歴史の深さを知る・
街道物語」が続く。
 続いて、1168年の高野山文書、西国寺文書、浄土寺
の安永の屏風絵など「尾道今昔」で尾道の歴史を。石見銀
山では、田中圭一元筑波大教授が3ページの論文を寄稿し
ている。
 結びが「もうひとつの街道・芸予諸島への道」で、尾道
から今治までのしまなみ海道を紹介、解説しており、まさ
に尾道のため、世界遺産をめざす尾道のためにつくられた
分かりやすい、目で見る歴史書(街道案内というよりも)
の構成になっている。
 石見銀山街道の名宿・名店として「宮徳」「青柳」「魚
信」「桂馬」が尾道関係として紹介され、「街道歳時記」
では「みなと祭」「山王祭」「祇園祭」「吉和太鼓踊り」
「山波艮神社餅つき神事」「木ノ庄鉦太鼓踊り」「ベッチ
ャー祭」「西国寺柴燈護摩」が四季の年中行事として紹介
されている。全19件のうち尾道が半分近い8件で、石見
銀山街道における尾道のウエイト、存在感がこれだけでも
伝わってくる。
 特筆は、この歳時記1ページの中で、全体の4割近くを
使ってカラー写真入りで「木ノ庄鉦太鼓踊り」を詳しく紹
介していることで、同踊りがこれだけスポットを浴びたの
は初めてといってよい。
 今流行の街道紹介としてだけでなく、「世界遺産をめざ
して・尾道」のもう1つの視点を学び・アプローチするた
めにも必見・必携のガイドブックといえる。



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