山陽日日新聞ロゴ 2003年7月10日(木)
1953年当時の本紙記事から(2)
尾道駅長室で会見を
 小津監督ら『東京物語』ロケハン来尾
 6月24日(水)付け−−見出し 「東京物語」ロケ・ハン
きょう小津組幹部来尾

 〔既報〕松竹映画秋の大作として期待されている「東京物語」
のロケーション地として選ぱれた尾道市に、二十四日午後十二時
四十五分尾道駅着の下り急行安蘇で同映画の監督小津安二郎氏、
松竹大船撮影所脚本部長野田高梧氏や山本プロデューサーをはじ
め小津組のスタッフ幹部がロケ・ハンのため来尾することになっ
た、と現在上京中の庫田市会議員から通報があり、また別個に松
竹本社からもそれぞれ関係筋に連絡があり、いよいよ「東京物語」
尾道ロケーションが確定したわけである。
 同映画は小津監督得意の親子もので、キャメラのこまかい描写
で知られている、こり性の小津監督が美しい山と海で彩られた尾
道市をどのように描きだすか注目されている。
 なお、未明から賑わう尾道魚市場の朝市の光景をロケーション
するため、早くも中国電力尾道営業所には夜間撮影用の電力設備
を施して欲しいと申入れている。
 6月25日(木)付け−−見出し 「東京物語」のロケ・ハン
小津監督「尾道辯」も研究

 〔既報〕松竹大船が秋の超大作として製作を予定している「東
京物語」は、既報の通り風光明媚と昔ながらの情緒豊かな尾道市
を中心としてロケーションされる事に決定したが、ロケ隊第一陣
として、監督小津安二郎氏、脚本家野田高梧氏、プロデューサー
山本武氏らは二十四日午後零時四十五分着急行安蘇で来尾、堀田
市会議長、玉川助役、加茂商工観光課長らの出迎えをうけ、早速
同駅長室で在尾記者団のインタビューに応じた。
 この日の小津監督は日焼けした黒い顔を紺背広でつゝみ、無造
作に結んだネクタイも藝術家らしく終始笑みをたゝえていたが、
長途の旅行につかれ記者団の質問には余り多くを語らず、この映
画の一切の責任を持つ山本プロデューサーが、長身痩躯の身にき
ちんと紺背広をまといゆっくりとした口調で「この映画は脚本の
最初の数カットが尾道市の昔ながらの情緒を中心に書かれている
ので、当地でロケをやる事になったのですが、本格的な撮影は来
月二十日頃から始めたいと思っております。今日三人で来たのは
一週間の予定で、尾道で撮影する場所の下見と尾道弁の研究に来
たわけです。出演俳優は今のところ原節子、笠智衆などが決定し
ており、ロケに来る時は、三十七、八名になる予定で、殆ど全員
が参加します。



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